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巻頭言Consultants真の担い手へ馬場直俊一般社団法人建設コンサルタンツ協会常任理事調査・設計分野も含む『改正品確法』が施行された。担い手の中長期的な育成及び確保の促進も謳われ、画期的だ。一方で、社会資本整備審議会から「最後の警告今すぐ本格的なメンテナンスに舵を切れ」との強烈な提言がなされた。技術者は記念碑的な設計への志向が強い。夢は持ち続けていくべきだが、安全・安心・発展の礎となったインフラの機能・役割・技術の検証を次世代の設計者へ適確に継承していく責務がある。これからが正念場だ。シビルエンジニアを目指し、上流域の担い手として役割が増している建設コンサルタント技術者は、言わば医師の世界に入ってきた。医師は人を創造することなく、命を守り健全な身体機能の維持を目的に治療・延命措置を行う。生命には寿命がある。インフラの機能に寿命があっては日本の持続的発展に支障を来す。定期健康診断や人間ドッグでの精密検診の必要性は当然だ。現在のインフラの歴史は短い。本格的なメンテナンスは緒に就いたばかりだ。既存機能を保持したままの治療も高度な技術力が必要だ。未経験分野も多く、症状も多岐にわたり合併症や副作用の怖れもある。肝心のカルテは、一部を除き未整備で蓄積も無い。医師数は人口当たりで過不足が論ぜられる。無医町村も多く存在する。インフラの医師となる専門技術者は如何ほど必要であろう。昨年12月に『国土強靭化基本法』が施行された。国の根幹的役割は、外交・防衛・教育と戦略的インフラ整備だ。「土木が不人気なら定員を減らせば」との一部の声に愕然とした。本末転倒だ。国土強靭化を担う人材、しかも日本特有の国土環境の特性を理解し、基礎領域を十分学んだ自国の技術者の育成強化が大前提だ。同時に、企業とは言え、生活・経営が安定した環境下で各地域の個性を活かし実践・経験を幅広く積まねば、担い手は育たない。日本の発展を支えてきたインフラは苦痛に耐えながら治療を待っている。途上国には、救急病院入口で治療費の支払い能力の有無により治療か放置かが決定される国もある。財政的理由で瀕死のインフラを見捨てたとしたら、それこそ無駄な公共事業だったとなるだろう。医師の不在は論外だ。医療行為は一般教養・基礎医学・臨床医学の極めて高い資格試験のハードルを越え、更に実務経験を積んだ有資格者のみに許可され、指定された単位数取得による継続教育や実績で更新される国もある。女性医師も多い。医師は法律により認知され、貪欲な知識吸収と経験・実績により社会的信頼性と名誉を得ている。診療報酬は医療保険制度下での医療サービスの公定価格だが、医療行為に価格競争ましてやダンピング・クジ引きなど聞いたことが無い。もちろん、検査漬けや薬漬けのような過診・誤診は問題で、専門知識に加え医療倫理が絶対条件だ。また、専門家たる医師主導の一方的な行為の反省等も踏まえ、治療方法・副作用等の説明による患者や家族とのインフォームド・コンセント(合意)も近年確立された。が、患者等が治療方法を指示することは無い。施設管理者や利用者は物言わぬインフラの代弁者や家族とも言える。5年毎の言わばインフラドックもルール化された。病院等も大学総合病院・専門医院・地域医療機関・診療所等、各々の役割を果たしている。高度医療には各分野の専門家が一堂に会す。施工分野も含めたCM・PPP等に相当し、未知の分野のリスクと責任を共有している。情報の共有化、患者毎に症状が異なる中での回診による若手へのノウハウ伝授、一定期間携わる主治医・提携医療機関等、種々のヒントも見える。建設コンサルタントに於いては、従来より新設設計から補修に至るまで中心的な役割を果たしてきたRCCMの専門性を総合的に更に高め、たゆまぬ自発的な継続教育(CPD)と、調査設計からメンテナンスを含めたPDCAサイクルの実務経験を実践してこそ、真に名医となれる。藪医者や藪にもなれぬ筍医者ではインフラが可哀そうだ。協会の役割も重要となってきた。