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特集インフラの未来夢をみる大切さ子供の頃、母が中学生の頃にとっていた学習雑誌を見るのが好きだった。古めかしいイラスト、印刷の質のせいでおどろおどろしい色合いになっている写真などを、たまに眺める至福の時間。その中に「わたしたちの21世紀」という特集があり、それがまたグッとくる内容だった。そう、透明ドームの中の都市や宙に浮く車、壁掛けテレビや電送新聞、吹き付け洋服の世界だ。他、原子力冷蔵庫や大規模地熱発電など、夢と希望だけを盛り込んだ世界がアナクロな表現で描かれており、ページをめくるたびに奇妙にワクワクしたものである。そして後年、2 1世紀を迎えた頃に自分はライターとなり、そのワクワク感を記事にした。文字通り「昔の雑誌の『未来予想図』を鑑賞する」というものである。母の雑誌だけでなく、終戦後しばらくたってからの雑誌とか、もっと時代を下ったあとの少年誌とかを古本屋で集めて、ただただ俯瞰してみるというものだ。「音速滑走体」「冬眠銀行」などの未来的な言葉と共に「オートメーション」「ビフテキ」などのアナクロ風味の言葉が使われているのを見ては、しびれていた。そこからさらに後年、どうにもそれらの未来図が頭の隅にこびりついていた私は、描かれた未来の生活の様子をドールハウスで表現してみたりもした。それは鑑賞や俯瞰などという本来の目的からは少しずれて、あの昔の未来図独特のバタ臭さ、どぎつい色表現や愉快な機器のデザインを再現するのが主旨ではあったが、それなりに未来図というものに取り組めたと思う。ところで、先に申し上げた記事「昔の雑誌の『未来予想図』を鑑賞する」で、特に印象に残ったのは昭和2 6年発行の少年雑誌の記事だ。そこに描かれていた未来図にハッとした。いたって普通なのだ。現代人から見れば、描かれている「鉄筋コンクリートの建物、全戸に降り注ぐ日光、舗装道路、スポーツグラウンド、通学バス・・・」それらは全部、あって当たり前になっているものばかりだ。戦後6年しか経っていない当時の人々が思い描いた未来の夢004Civil Engineering Consultant VOL.265 October 2014