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特集インフラの未来?どうなっている・どうなってほしい・我々の未来予想図?1夢見られた現代?どんなインフラが求められたか?長山靖生NAGAYAMA Yasuo日本文藝家協会会員日本推理作家協会会員様々な未来への想いが今につながっている。19世紀後半から20世紀初頭、日本では幕末?明治?大正期、科学技術が飛躍的に進歩し、社会が劇的に変動した時代。当時の人々は100年後や200年後をどのように想像したのだろうか?通信と交通の発達科学技術が飛躍的に進歩し、庶民の生活環境も大きく変化した19世紀後半から20世紀初頭にかけての時期は、未来のさらに進歩した世界を想像することが流行し、100年後や200年後を舞台とした未来小説や科学小説が数多く書かれた。そこには現在の生活のありようを的確に予測したものもあれば、未だにわれわれが実現していない技術も含まれている。たとえばオランダの植物学者ペーター・ハルティングが1865年に著した未来小説には、ガラスで覆われた高層ビルが立ち並ぶ未来都市や、世界中に電信網が張り巡らされてリアルタイムで世界中の情報が飛び交う世界が描かれている。劇場中継を映し出す装置についての言及もあり、これはテレビを予言したものだったといってよいだろう。その一方で月世界に鉱山が存在することが地球から観測で確認されたため、その開発を手懸ける会社が設立されたという話題も出てくる。この小説は維新期の日本で、翻訳書が二種類も出版された。ひとつは近藤真琴訳『新未来記』(慶応4年翻訳、刊行は明治11年)であり、今ひとつは上条信次訳『後生夢物語』(明治7年)だ。近藤真琴は幕府に出仕しており、幕府の近代化政策の参考にするために翻訳したが、明治維新により近藤は一時隠遁。その後、新政府に仕えた。一方、上条のほうは民権運動に尽力し、西園寺公望や中江兆民とともに「東洋自由新聞」を起こした人物。明治期には、このような大きな夢を胸に抱きつつ、現実政治に取り組んだ人が、官僚、在野を問わず多かった。高層マンションから女子アナまでジュール・ヴェルヌが大気圏を脱して月を周回する砲弾型ロケットや潜水艦、巨大プロペラ飛行機などを「予言」したことはよく知られている。ヴェルヌと同時代のフランス人作家で画家でもあったアルベール・ロビダは、当時は風刺作家と思われていたが、今になってみると意外にも的確に現代社会を予言していた。都市では高層住宅が多くなっているが、未来の高層マンションでは見晴らしのいい高層階のほうが高く、低層階は安いという設定になっている。これは今では当たり前だが、19世紀には低層階ほど高くて、階段を登らねばならない高層階は安値だった。また女性が社会進出し、政治家や弁護士、それに新聞記者になる未来を予言している。さらには、特派員として地球の裏側で起こっている戦争の取材に出かけ、戦地から生中継映像を送ってくる「女性映像新聞記者」も登場するのだが、「映像新聞」というのはテレビのワイドショーみたいなもので、「女性映像新聞記者」は女性アナウンサーに相当するだろう。ロビダの予測は、ヴェルヌに比べると小ぶりな小説が多いが、それだけに生活に密着した部分での鋭い指摘が光っている。テレビ電話や圧縮空気によってカプセル型の列車をチューブ内で走行させる高速列車なども想像している。レールと車輪の摩擦がない列車という発想で、今日のリニアモーターカーに通じるものがある。幻想文学の大家として知られるオーギュスト・リラダンにも、意外と科学小説が多い。『未来のイヴ』(1886年)では女性型アンドロイドの開発がテーマとなっており、006Civil Engineering Consultant VOL.265 October 2014