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写真7車も通るロイヤルゴージ・ブリッジ写真5ロイヤルゴージ・ブリッジから望むハンギング・写真6渓谷の上空に架かるロイヤルゴージ・ブリッジブリッジと谷底の駅ハンギング・ブリッジの建設に際し、最初に行った測量では架橋地点にアプローチするため、渓谷上部からロープで吊り下がらなければ調査できない状況だった。橋梁の計画は、中間支点を設けなければ成立しない構造となるため、3径間2主桁橋とした。急流で橋脚設置が困難な川側の橋桁は、橋脚位置にA形の鋼製フレームからワイヤーで桁を吊る構造とし、岩壁側の橋桁の橋脚位置は岩を削って造成し、小規模な橋脚を建てる構造とした。二つの主桁は、現在も建設当時のものを利用している。3ftの狭軌(914mm)から標準軌(1,435mm)への変更などによる荷重増加のため、岩盤と主桁の間にコンクリートを流し込んで支点を増やす補強をした。変更工事中はレールが3本あったが、1920年に狭軌のレール1本が撤去された。また、1980年代には二重積コンテナなどの背の高い車両を通すため、A形フレームが約60cm高い位置に改良されている。現在、A形フレームは荷重の10%しか負担していない。この鋼製橋梁が施工されるまでは、木製の仮橋が設置されており、当時の鉄道建設が短期間で行われていることを考慮すると、目的地へ早期に到達するため、先の工区へ資機材運搬を目論んでいたのかもしれない。現在の鉄道の維持管理は、観光列車が休止している1~2月の冬期に12人のスタッフで行われる。冬期のアーカンザス川は水面に60cm程度の氷が張るほど寒いため、凍結・融解により岩が剥離して発生する落石が多い。爆破処理が必要なほど大きな岩が河川に落ちてしまった場合は、台風カトリーナの堤防補強で活躍した陸軍工兵隊が対応してくれる。また上流に4カ所の貯水湖があり、渓谷の中という特殊な条件でありながら、1921年以降の洪水被害は記録に残っていない。■ロイヤルゴージ・ブリッジロイヤルゴージ・ルート鉄道とアーカンザス川の上空を跨ぐロイヤルゴージ・ブリッジは1929年に完成した吊橋。2001年までは水面から床板までの高さが世界一で、高さ291m、中央経間268m、橋長387m、幅員5.5mである。建設費は35万ドル、現在の金額で約2,000万ドルを超えるほどであった。橋を含めたこの地域は市営の公園となっている。橋の欄干には、バンジージャンプをした数名の名前とともに「釣り禁止」の看板が出ており、アメリカ人のユーモアの一端を垣間見ることができる。厚板を使った木製床版で自動車も通ることができ、その床板の隙間からは300m下の谷底が見える。この公園では2013年6月11日に火災が発生し、4日後に鎮火した。この火事で敷地面積の90%と、52のうちの48の建物が焼失した。橋本体の被害は、南(右岸)側の床板約100枚が焦げるなど比較的軽微であり、床板やメインケーブルの一部が交換された。橋の北(左岸)側から崖下の川沿いにあるハンギング・ブリッジまでは、かつて急勾配のインクラインによって、公園から谷底にある駅にアクセス出来ていた。しかし、インクラインが改良工事中のアクシデントで壊れ、現在、再開は不可能となっている。<参考資料>1)『Rails Thru The Gorge A Mile By Mile Guide For The Royal Gorge Route』Doris B. Osterwald 2003 Western Guideways.Ltd2)『Royal Gorge Route Railroad』ホームページ(https://www.royalgorgeroute.com/)3)「在デンバー日本総領事館ホームページ」(http://www.denver.us.emb-japan.go.jp/jp/bilateral/co.html)4)『黄金のくさび海を渡ったラストプリンス松平忠厚(上田藩主の弟)』飯沼信子1996年郷土出版5)『苦難の道を自ら切り開いた天才技術者の生涯』高崎哲郎土木学会誌vol.882003年10月号6)『STRUCTURE』August, 2008「C. Shaler Smith」The National Council ofStructural Engineers Associations(NCSEA)<取材協力・資料提供>1)Royal Gorge Route Railroad2)小池きよみち(通訳)<図・写真提供>図1、2、3、写真3 Rails Thru The GorgeP22上、写真4、6近藤安統写真1佐々木勝写真2川崎謙次写真5塚本敏行写真7茂木道夫Civil Engineering Consultant VOL.266 January 2015025