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写真5トンネル施工のドリルリグ「ジャンボ」写真6 岩盤斜面の岩を落とす「ハイスケーラーズ」写真7ブロック工法で施工中のフーバーダム写真8ダム下流に架かる通称コロラドリバー橋写真9貯水率が下がったミード湖と取水塔であったため、どこの建設会社でも経験が無かったための判断であろう。これは現在でいうジョイントベンチャー(JV)の先駆けである。建設に際し、まずはコロラド川の流れを迂回・転流させる必要があった。1931年6月、ダムサイトの両側の岩壁に2つずつ、計4つのトンネルを掘り進めた。トンネルはドリルとダイナマイトによって掘削し、1933年11月に完成した。このトンネルはダム完成後も放水路として機能している。また、ダム本体を建設する前にやらなければならないことがあった。ダムサイトとなる峡谷には、表面が浸食により緩くなった岩盤が存在している。これらを取り除く作業が必要となってくる。この仕事に携わる作業員を「ハイスケーラーズ(Highscalers)」と呼んだ。彼らはロープで岩壁を下り、ジャックハンマードリルとダイナマイトを使って緩くなった岩盤を落としていく。これはこのダム建設で最も危険な作業であった。彼らは落石対策のため、布の帽子をコールタールでコーティングした即席のヘルメット「ハードボイルドハット」を作り、身を守っていた。この効果を実感したシックスカンパニーズは、ヘルメットを作り全ての作業員に着用させた。ダムを建設するにあたり、いくつかの新技術が開発されている。コンクリートの熱応力の対策のため、発熱量が少ない中庸熱コンクリートが開発された。ダムの施工には縦横約15m、高さ1.5mのブロックごとに分割してコンクリートを打設していく工法が採用された。これらのコンクリートブロックにはパイプが通してあり、冷却水を循環させることでコンクリートの発熱を抑えた。また、コンクリート製造から締固めまで大規模な機械化施工が初めて導入された。フーバーダム建設は世界恐慌による失業者対策や景気回復を目論んだ公共事業という側面もあった。最も多い時で5,218人の労働者が雇用され、彼らに支払う月給総額は75万ドルにものぼった。事故による犠牲者も多く、96人とも112人とも言われている。ジョイントベンチャーを設立し、数多くの新技術を開発し、さらに大量雇用による人海戦術など、様々な技術や手法を駆使して造られたフーバーダムは、なんと当初予定より2年も早く完成を迎えた。1935年9月30日、第32代大統領フランクリン・D・ルーズベルトによりダム028Civil Engineering Consultant VOL.266 January 2015