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写真3ケーブルを循環させる動力滑車写真5車庫内では押して動かす市民の間では賛否両論となった。とりわけ、ケーブルカー廃止反対市民委員会が発足し、存続のための歌が作られたり、ケーブルカー美術展が開催されるなど、7年間続いた活動により、新聞社のデスクには反対署名が山ほど積まれることとなった。その結果1955年に住民投票が行われ、現在も運行している3路線の存続が決定し、「住民の過半数の賛成がなければ廃止することはできない」とした条例が施行され、1964年にはアメリカ初の「動く国定歴史記念物」に指定された。1982年、開通して100年あまり経ったため、重軌道や鉄筋コンクリートの溝になるなど大規模な改修工事が施され、2年後に再び動き出した時は街中が祝賀ムードに包まれた。以来、今日に至るまで開通当時の面影を残したまま運行され続けている。■全て赤レンガの建物で管理現在運行しているケーブルカーはいずれも通りの名が付いた、1カリフォルニア路線(約20分)、2パウエル-ハイド路線(約25分)、3パウエル-メイソン路線(約25分)の3つである。これらの路線のほぼ真ん中に位置する赤レンガの建物は、ケーブルカー博物館である。ここは博物館としての展示物があるだけではなく、心臓部とも言える、ケーブルを動かす巨大な動力滑車が豪快な音をたてて回っている動力室(パワーハウス)である。近くに運転司令室があり、ケーブルカーの車庫もこの建物内にある。全ての車両がここから出発しここに戻ってくる。ケーブルカーシステムの全てがこの一箇所で運営・維持管理されている。車両の走行は実にシンプルであり、車庫から出る時は手で押しながら下り勾配を利用して道に出る。戻って来た車両も下り勾配を利用して車庫内に入る。車庫が斜面に位置している利点を活かしている。実は3路線にもかかわらず、道路に張り巡らされたケーブルは、1カリフォルニア線、2パウエル線、3ハイド線、4メイソン線と4本ある。理由は往時の路線網のケーブル敷設ルートを活用したためである。それらのケーブルは動力室にある強力なモーターにより時速約15kmで循環されている。ケーブルの伸び量はほとんどが張力によるもので、新品は1週間ほどで約15m伸びる。それに対応するための移動滑車が動力室に設置されている。そして伸びた分だけケーブルをカットして、ケーブルを繋ぎ直す。その後3~6カ月の使用で、さらに最大約12m伸びる。この時点でケーブルの交換が必要となる。また路線によって異なるが、ケーブルの寿命は最大で180日(カリフォルニア線)で、最短で30日(パウエル線)となる。パウエル線は、ハイドとメイソンの両方のケーブルカーが通り最も頻繁に交換が必要で、カリフォルニア線はケーブルカーが一度に6~7両しか走らないため長く持つ。なお、ケーブルは、場合によっては数日で交換しなければならず、何らかの理由でケーブルが切れたり破損したりした場合、そのケーブルを使っている路線の全車両が停止してしまう。どうにもならなくなった場合には、バスが各車両の乗客を迎えに行くようだ。写真4ケーブルの伸び量を調整する移動滑車■シンプルな車両の構造外観は派手に彩られている車両だが、仕組み自体はシンプルである。真ん中に運転台があり、両側に座席が配置されている。グリップマン(運転手)が、道路の溝032Civil Engineering Consultant VOL.266 January 2015