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写真6運転台のケーブルを掴む装置写真7手動の転車台(パウエル路線終点)写真8観光客に人気のケーブルカーに埋め込まれて動いているケーブルを、グリップで掴むか放すかそれともブレーキを踏むか、ただそれだけで動いている。停留所や停止線で停車したり、スピードをコントロールするのはグリップマンの技だ。車掌も乗っており、二人で連携してブレーキを調節しながら急坂を下りカーブを曲がる。朝6時~夜1時まで概ね10分間隔で運行している。カリフォルニア路線の車両は前後に運転台があるが、パウエル路線は蒸気機関車のように一方にしかないため、運転手や車掌が手で転車台を押して方向転換する仕組みである。■乗車してみるとグリップマンの陽気なベルで発車。グリップを掴んだ時のグッとした感じが直に体に伝わる。外側に向いている木造のイスは固く、カーブ等で車両から落ちないように内側に軽く沈んでいる。オープンデッキの開放感、ストップアンドゴーがそのまま伝わり揺れる車両。反対車線の車両が迫って来て、見知らぬ人同士が互いに笑顔で手を振り合う。遊園地のアトラクション的な要素がある。道路にはケーブルカーと自動車の走行車線が明確に白線で仕切られており、軌道内はケーブルカー優先だ。交差点ではケーブルカー専用信号もある。■シームレスが障害にケーブルカーの車両は、全てが古いものの丁寧に手入れが施され、様々な色による鮮やかさは健在だ。近年、障害者や健常者問わず誰もが速やかな移動が出来るように、段差や障害のないシームレス化が求められている。カリフォルニア州にも高齢者や障害者に対するバリアフリーの考え方が法律のもとで進められている。しかし、ケーブルカーはその構造や仕組みから、乗り降りすることが極めて難しい乗り物である。実際、他の交通機関には義務付けられている車椅子用の座席なども緩和措置がとられている。ただ、今後新たに造る車両にはバリアフリー法の適用が必要となる。古いものの価値を活かしながら大切に使用されている車両だが、実際にはこの法律に適合した車両を造ることができず、故障しても今あるものを修理し使い続けなければならない。サンフランシスコ市にとって、ケーブルカーは交通機関の一部であるとともに、貴重な観光収入源である。丘の街の風景に溶け込み、不思議な高揚感を味わうことのできるこの乗り物の価値に誇りを持ちながら、ケーブルカーの技術者たちは、今もグリップを握りつづけている。<参考資料>1)『The Cable Car in America』George W. Hilton1997Stanford UniversityPress2)『Watermusic in the Track』2012Friends of Cable Car Museum3)「San Francisco Cable Car Museum」ホームページ(http://www.cablecarmuseum.org/)4)「Virtual Museum of the City of San Francisco」ホームページ(http://www.sfmuseum.net/)<取材協力・資料提供>1)San Francisco Municipal Transportation Agency2)井坂暁(通訳)<執筆協力>塚本敏行<図・写真提供>図1現地資料「Current Rope Diagram」を基に株式会社大應作成P30上、写真8茂木道夫写真1『Watermusic in the Track』より写真2佐々木勝写真3、6大角直写真4塚本敏行写真5川崎謙次写真7近藤安統Civil Engineering Consultant VOL.266 January 2015033