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論説・提言第1回なぜ国土強靭化か語り手大石久和(OHISHI Hisakazu)一般財団法人国土技術研究センター国土政策研究所長一般社団法人建設コンサルタンツ協会理事19 4 5年兵庫県出身。京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、建設省(現・国土交通省)入省。大臣官房技術審議官、道路局長、国土交通省技監を歴任。2 0 0 4年7月より(財)国土技術研究センター理事長、2013年6月より一般財団法人国土技術研究センター国土政策研究所長。また、京都大学大学院経営管理研究部特命教授、公益社団法人日本道路協会会長を兼務する。「国土に働きかけることによってはじめて国土は恵みを返してくれる。いかに国土に働きかけていくのか」を主題とする「国土学」を提唱。道の駅制度化の推進者でもある。近著に『日本人はなぜ大災害を受け止めることができるのか(海竜社)』『国土と日本人災害大国の生き方(中公新書)』など。聞き手前川秀和(MAEKAWA Hidekazu)一般社団法人建設コンサルタンツ協会副会長19 5 5年石川県出身。東京大学工学部土木工学科卒業後、建設省(現・国土交通省)入省。大臣官房技術調査課長、北陸地方整備局長、道路局長を歴任。2 0 13年11月から(一社)建設コンサルタンツ協会顧問、現在副会長兼専務理事。また、2 0 0 6年3月に金沢大学大学院環境科学専攻で工学博士を取得、東京工業大学屋井鉄雄教授と共著の『市民参画の道づくり(ぎょうせい)』がある。強靭化と言える時代前川:1998年6月号の中央公論において、東京工業大学教授川島一彦氏と建設省官房技術審議官大石久和氏の共同執筆による論考『脆弱国土を誰が守る』が発表されました。それが反響を呼んだことが、国土強靭化の啓発になったと思います。日本における国土強靭化の取り組みも、発表された時点からすると、隔世の感があります。まずは、ここまで来たことに対する評価や認識、これからどういう点が重要になるのかを、お聞かせ願います。大石:「強靭化」という言葉が、結構まともに使える時代が来たと思います。最初に京都大学教授の藤井聡氏が「強靭化」という言い方をした時のメディアの反応は、「バラマキ公共事業と同じ」という捉え方でした。最近、やっと少しずつ「強靭化への取り組みが必要かな」という感じになって来たと思います。その理由の一つが災害の頻発です。2014年は災害年だった気がします。広島の土砂災害で多くの方がお亡くなりになり、まさかと思う御嶽山で登山者が犠牲になってしまいました。2013年の伊豆大島や三重県の災害、そして東日本大震災があった年で忘れがちな紀伊半島の大水害は、1981年の十津川大水害以来でした。災害が多い国に暮らしているから備えが必要という感覚が、もちろんハードの整備だけではありませんが、国民の間に芽生えて来たと思います。防災に対する強靭化も非常に大事ですが、国土強靭化にはもう一つ理由があります。それは日本の国際経済競争力をしっかりしたものにすることです。例えば、1980年の時点でアジアの港湾の中では隔絶した存在だった神戸港が今や番外に去り、国の経済競争力を保障する高速道路や鉄道、港湾といったインフラが相対的に劣位になりつつあります。その観点から、強靭化をきちんと捉えようという動きになっていますが、残念ながら、こちらの浸透力はまだまだ十分ではありません。網羅的な思考による脆弱性評価前川:確かに東日本大震災以来、毎年のようにびっくりするような災害が起きたことで、国民の意識も相当変わって来た気がします。そして、防災や減災だけではなくあらゆる経済活動を含めて、国民の生命・財産を守る、幅広い強靭化が必要と思います。そういう意味では今回政府が、「起ってはならない45の事象と政府機能の12分野のマトリックス」を使って、かなり網羅的なリスクアセスメントを行いました。何が出来ているか、何が足りないかをきちんと評価して行ったことは初めてではないでしょうか。大石:それはかなり画期的な方法だったと思います。実002Civil Engineering Consultant VOL.266 January 2015