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答スペクトルと、ダム上下流方向の加速度時刻歴を示します。ダム堤体の応答値は、損傷過程を考慮できる非線形動的応答解析にて実施しました。解析に用いる堤体の物性値は『烏原ダム調査研究会報告書』4)における粗石モルタルの試験結果を参考に設定し、粗石モルタルの動弾性係数(堤体の硬さ)が堤体の動的特性に大きく影響する(値が大きいと硬い→小刻みな揺れ方→振動数大)ことから、以下の点に配慮しました。検討ではダム天端と下流側下端で常時微動測定を行い、その測定データから図4に示すダムの卓越振動数(14.6Hz)を求めました。次に、粗石モルタルの試験結果から推定した弾性係数を用いた計算モデルで固有振動数を解析し、この結果と卓越振動数を照合することで、堤体全体の適切な動弾性係数を設定し、地震時の堤体挙動シミュレーションの信頼性を高めています。烏原ダムのレベル2地震動に対する耐震性能照査の結果、図6に示すように堤敷上流端付近(約4m)において、引張亀裂が発生する可能性はあるものの、その亀裂は堤体上流から下流までを貫通するものではないことが確認されました。また図7に示す堤敷全体平均のせん断摩擦に対する安全率は、全ての時刻歴において安全率1.0以上を確保していることが確認されました。これらの結果からレベル2地震時において、堤体の一部に引張応力に起因する引張亀裂が発生する可能性はありますが、堤体を分断するおそれはないと評価され、貯水機能は維持できると判断されました。■おわりに竣工後100年以上を経過した古い重力式コンクリートダム本体について、現況堤体の状態を最新技術で評価し、耐震性能を確認した結果、その地域で最大級の地震が発生しても、ダムに貯まった水が流れ出すような損傷は発生しないことが分かりました。図5ダム堤体・基礎地盤のモデル化(二次元有限要素解析モデル)<参考文献>1)「大規模地震に対するダム耐震性能照査指針(案)・同解説」国土交通省河川局,2005.32)「神戸市水道七十年史」神戸市水道局,1973.3)地震調査研究推進本部地震調査委員会:六甲・淡路島断層帯の長期評価について,http://www.jishin.go.jp/main/chousa/05jan_rokko/index.htm,2005.4)神戸市水道局計画課:烏原ダム調査研究会報告書,1982.1009080せん断摩擦安全率706050403020100020406080100120140160時間(s)図6地震後のひび割れひずみ分布図(引張亀裂分布図)図7堤敷全体平均のせん断摩擦安全率の時刻歴分布Civil Engineering Consultant VOL.266 January 2015045