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写真2コアの表面観察による岩種の同定(コア番号2)写真3コア破断面の骨材周囲の反応リング(目視で3 2個)と、白色の滲出ゲル(コア番号11)のではないかと考えられる。ところで、コンクリートの水和反応に必要な水は水セメント比にして20数%といわれている。すなわち、残りの水はセメントと反応していない余剰水である。このことからだけでも、内部の反応は長期に及ぶことを示唆している。■現地調査と試験項目この橋台は、上部に鉄筋沿いの水平ひび割れと段差、全体には亀甲状のひび割れと変色が見られ、アルカリ骨材反応による疑いが懸念された。上部に認められる水平ひび割れと段差は、ブリーディングと、支承部を固定とした片持ち梁の自由端の膨張によるせり上がり作用によるものと考えられる。外部環境もひび割れの顕在化に影響する。橋台は堅壁の両サイドに翼壁を抱え、背後に滞水しやすい。また、凍結防止剤の散布、橋の伸縮装置からの漏水、路肩からの水はね、飛沫落下の影響を受ける。南側の翼壁は直射日光を受け、雨水に晒され、乾湿の繰り返しを受ける。これらの環境条件が整うと反応が促進する。施工時期が数年異なり、並行に近接する橋台A(堅壁、ひび割れ多)、橋台B(堅壁、ひび割れ中、ただし南側の翼壁上段部はひび割れ多)、橋台C(堅壁、ひび割れ少)の3構造物でひび割れ分布調査、ハツリ調査を実施した。ひび割れ部の直ハツリで、かぶり10cmの鉄筋に錆はなく、指示薬の噴霧から中性化も進んでいない。天端の鉄筋の曲線部は応力が小さいかぶせ部のためハツリを省略した。3橋台から採取した16本のコアの観察や試験項目は、表1のとおりである。■コアの表面観察、岩種同定、■粉末Ⅹ線回折コアの表面観察では、使用粗骨材の全てに岩種を同定した(写真2)。ところが、内部ひび割れは目視できず、期待する反応リングも見られなかった。しかし、コア端の破断面から数多くの反応リングが見られる興味深い結果が得られた(写真3)。コア表面にあまり見られないのは回転ドリルの摩擦で剥ぎ取られたのではないかと考えられる。図1にコアの表面観察から得られた橋台別の使用骨材の岩種構成と、コア破断面別の反応リングの数を、橋台のひび割れの程度と関連して掲げる。ひび割れの多い橋台Aは、反応性骨材といわれるチャートが多い。当然、ひび割れの多い橋台Aと橋台Bの翼壁上段部のコア破断面で数多くの反応リングが見られる。表面ひび割れとコンクリート内部の反応リングは密接な関係にあるとはいえ、コンクリートかぶり部が膨張してひび割れるというよりは、コンクリート内部の反応で膨張圧が発生し、拘束する鉄筋位置を境界として構造物表面にひび割れが発現することの証しといえる。偏光顕微鏡観察からは、骨材には深海生物の放散虫(写真4)の微化石が見つかり、チャートであると同定した。内陸のこの地方は古生代に形成された岩石が海底からもたらされた付加体であると考えられている。粉末Ⅹ線回折では、反応性の鉱物である石英が卓越していることが判明した(図2)。■コア試験結果から圧縮強度(図3)が、ひび割れにもかかわらず設計基準強度を上回っていることから、コンクリートの反応余剰水が内部に存在して、今なお強度増が続いていると考えられる。静弾性係数(図3)が、道路橋示方書の圧縮強度に対して示す値より大きく低下しているのも、微細な内部ひび割れを有するアルカリ骨材反応の特徴である。中性化試験では全てが14mm以浅であり、現在も良好といえる。Civil Engineering Consultant VOL.266 January 2015047