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際に担当した藤井聡氏から聞いた話ですが、各省庁からこの議論に参加したメンバーが、「そんな見方もあったのか」「そういう方法もあったのか」という声を上げたくらい、所掌領域に閉じこもっていては出て来ない事柄を強く引き出せた、と言っています。それはそれで、今回のリスクアセスメントは評価できると思います。ただし、この45とか12はパラレルにあるのではなく、AがあるからBが起るという有機的な関係にあるはずです。並べただけでは政策上のプライオリティーが現れ難いです。もう一つ大事なことは、最も重要なこの国の脆弱性は何かが、あまりに数多くの項目を羅列することによって、むしろ見え難くなっている気がします。その点をはっきりと認識した上で、今後さらに議論していくべきと思います。実行を伴った国土計画の必要性大石:最近、東京大学客員教授の増田寛也氏が、自身の岩手県知事時代の経験も踏まえて、自然現象的にも社会現象的にも地方の人口が急速に減少している一方で、東京、首都圏の肥大化が止まらないことに対して、随分と分り易い言い方で警鐘を鳴らました。それは「20代と30代の女性がいなくなれば、いくら合計特殊出生率(一人の女性が一生に産む子供の平均数)が上がっても、人口が増えることはない」と。言われてみれば当たり前のことですが、このような言い方をした人はあまりいません。「20代と30代の女性が急速に減少する市町村数が8割にもなる地域が、北東北や中国地方の日本海側に現れる」と言う点が非常に分り易く、国民の皆さんに「おおそうか!」と思わせたのではないでしょうか。1995年に日本は生産年齢人口約8,710万人でピークアウトしました。この時点で、日本の人口問題に本格的に取り組んでいれば、ここまでの危機感につながるような現象は起きていなかったと思います。しかし遅すぎたと悲観することはなく、肥大化する東京をどういう都市として位置付けるのかということと、地方への分散を本格的に考える必要があります。ロンドンとニューヨークの時差8時間、残りの8時間を埋める地域が絶対にアジアで必要であり、それを東京が担う。東京をそのように捉えれば、小さくな写真1 CASで製造された特産物れば良いのではなく、他の都市にはない世界的な機能を装備した都市が求められます。そのためには情報通信と交通の機能、できれば英語で生活できる環境も整える必要があります。東京が持ち過ぎているヒト・モノ・カネの集中度を下げ、その負荷を地方が担わなければなりません。そういう意味で、きちんとした実行性を伴った国土計画を必要とする時代が来たと思います。これこそが日本の最大危機だと思います。近い将来、東京に大地震や大洪水が来ることは確実ですから、その備えは必要です。魅力的な地方都市前川:日本のために東京が担う役割はとても大きいと思います。一方、東京には高齢者が非常に多く、しかも20代や30代の女性は、地方の女性に比べて出生率が低い。そこが問題で、やはり東京で安心して産んで育てられる環境が重要と思います。それに、高齢者が安心して暮らせることと両立させるのは、かなり大変な気がします。大石:そのためには、とにかく東京が抱えている負荷を小さくしないといけません。一方、地方も子育てに対して魅力的な都市に変わる必要があります。あまちょう島根県隠岐の海士町は、いろいろと画期的な努力をしています。一つは、CAS(Cells Alive System)という細胞が破壊されない冷凍方法を導入して、カキやイカなどを生きたままの状態で市場に出しています。大阪辺りからIターンして来た女性も、そういうところに就業できます。また、入学者が減少していた高校も立て直しました。島外の子供たちを高校に呼び込む「島前高校魅力化プロジェクト」により、学習のスキルが上がり、京都からも生徒が入学しています。こうした挑戦ならば、別に海士町でなくても出来るように思います。その取り組みが全国で始まって欲しい。数学者・エッセイストの藤原正彦氏が、「やはり、調和Civil Engineering Consultant VOL.266 January 2015003