ブックタイトルConsultant266号

ページ
53/74

このページは Consultant266号 の電子ブックに掲載されている53ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

Consultant266号

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

Consultant266号

ない。そのため、冬の間でも鳥が魚を獲ることができる。また、水の中に見える線は、アイス・アクセレレーション・チャネルという水路のようなもので、ベルヌーイの定理を利用して、流路を細くし流速を上げて流氷を砕くものだ。滝の流量はこの可動堰により、カナダとアメリカの比率がおよそ9:1に調節され、カナダ滝が約1億5,500万l/min、アメリカ滝が約1,400万l/minとなっている。それでもこの流量に比例した浸食が起こり、2000年後にはすべての水がカナダ側に流れ、アメリカ側が枯渇してしまうと予測されている。滝のあるナイアガラ断崖は上部約30mが非常に固い石灰岩で、その下が頁岩や土砂となっている。水が落ちる際には、柔らかい下の土砂を浸食し巻き上げ、上の石灰岩を削る。薄くなった石灰岩は崩壊し、水圧で粉砕されて砂になって流されていく。しかし、アメリカの二つの滝の流量は少ない。そのため、崩壊した石灰岩が粉砕されず、滝壺が無く岩が露出している。1969年にアメリカ陸軍工兵隊がアメリカ側の滝を止め、滝下の崩落した岩を除去するための調査を行った。染料を入れた水を流してみたが、水は滝として流れず、多くの亀裂に浸み込み滝の下から流れ出た。その状況から、陸軍のエンジニアたちは、岩を取り除いたら滝が崩壊してしまうとの結論に達した。グラウト注入工法なども検討されたが、景観を損なうとの理由で対策工を断念した。ただし、展望台があるルナ島崩落の危険を回避するため、約300本のロックボルトが施工された。ナイアガラ川の最上流となるエリー湖とオンタリオ湖の高度差は約110mある。水力発電用の水は可動堰の手前で、両国がそれぞれ二つの水門から取水している。カナダ側は、二つの水路トンネルを通ってナイアガラ・フォールズの町を迂回し、約10km下流のクイーンストンにあるアダム・ベック発電所でナイアガラ川に戻る。そこでの落差約100mを利用して発電している。最大発電量は200万kW強と大きい。アメリカ側もほぼ同様に発電している。日中は観光のため、ナイアガラ川の水の約50%(最低流量)を滝に流し50%を取水しているが、夜中(0~8時)は25%を滝に流し、75%を取水して発電している。写真3 可動堰と手前の線がアイス・アクセレレーション・チャネル写真5カナダ側の発電用取水水門写真4ナイアガラ断崖上部の石灰岩写真6アメリカ側のロバート・モーゼス発電所写真7日の出前の流量が少ないナイアガラの滝これも、滝の浸食防止に一役買っている。カナダ側のナイアガラ・フォールズでは「天気雨」がよく降る。しかしそれはナイアガラの滝の「水しぶき」だ。(文塚本敏行)<参考資料>1)『ナイアガラの滝(日本語版)』Bob Foley翻訳International Languagesナイアガラ・パークス局2)「日本カナダ学会ホームページ」(http://e-touhyou.com/)3)Unique Media Map『NIAGARA』2014/2016 Edition Unique MediaIncorporated4)「Niagara Parksホームページ」(http://www.niagaraparks.com/)5)「Canadaingカナダ旅行の写真と観光情報ホームページ」(http://canadaing.zening.info/)<取材協力>1)John Reep(Communications & Tourism Services)2)Harry Sakata(President, Certified Translator)<写真提供>写真1塚本敏行写真2、7川崎謙次写真3初芝成應写真4近藤安統写真5大角直写真6佐々木勝Civil Engineering Consultant VOL.266 January 2015051