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写真3ツムット地区の景観写真4エアフルトの街並み英夫先生のお話には大変驚かされた。確かに、村内を通行している車両は電気自動車と馬車しか見られない。観光客は4.8km手前のテッシュの駐車場に車を置き鉄道で村に入ることが義務づけられている。いわゆる、パークアンドライド方式であるが、日本国内で採用されている本方式は、都市部の渋滞緩和や観光客を効率よく移動させることをおもな目的としているのに対し、ツェルマットの場合は、環境・景観配慮を一番の目的とすることが大きな特徴である。日本の伝統的な街並みを有する観光地は見習うべき点かも知れないが、これには数年~数十年単位を見越した街づくりの視点が必要であると考えられる。都市政策に限らず、この「長期的な視点」が今の日本に欠けている点ではないかと気づかされた。なお、ツェルマットを歩いていると、電気自動車は走行音が静かなため、後方から近づいてきていることに気づかないことが多いが、クラクションを鳴らされることは一度もなく、あくまで「歩行者最優先」の姿勢が貫かれていた。住民の間でしっかりとしたビジョンを持って街並みを守り地域経営を行っていることに、改めて感心させられた。また、私は滞在中の自由時間にツェルマットの水力発電による電力の供給源となっているツムットダムを見に向かった。ツムットダムは堤高74mのアーチ式のコンクリートダムであり、ここで発電のほか水量調節を行っている。片道1時間半の一人歩きであったが、道中のお花畑やツムット村の風景などは、まさに「アルプスの少女ハイジ」を想起させ言葉に表せない感動を覚えた。■ドイツ~整然とした美しい街並み~ドイツでは立ち寄っただけの都市を含めると、6都市(フュッセン、ミュンヘン、ライプツィヒ、ドレスデン、エアフルト、フランクフルト)を訪れた。特に、フュッセン、エアフルトの街並みは質素ながらも非常に美しく、印象に残っている。ドイツの都市では、家屋の立地にあたっては配色や屋根の角度等に厳しい制限があり、“ドイツらしい”と言える独特の雰囲気を醸し出されていた。これらの都市では、住宅に奇抜な色を使用することは避けられ、淡い色合いの壁と、赤~茶色系統の屋根で統一されている。さらに、住宅の高さも規制があり、整然とした町並みが景観を引き立てており、国や各地域が自分たちの景観を財産として捉え、計画的にまちづくりを行ってきたことがよく伺い知ることができた。翻って日本ではここまで厳しい制限がある都市は多くはなく、多様な住宅が乱立している場合が多い。(ただし、いい意味として取ればバリエーションに富んでいるとも言えるかもしれない。)気候や風土が異なるため、単純にドイツやスイスの様式をそのまま日本に取り入れることは困難ではあるが、国や地域ごとの景観に対する取り組みを理解し、わが国に生かすことのできる知恵を模索することは非常に重要であると感じた。■おわりにこのたびの視察の機会を与えてくださった中村先生をはじめ、インフラストラクチャー研究会ならびにみなと総合研究財団の皆様には大変お世話になりました。また、多少のフライトプランの変更といったことはあったものの、大きな事故もなく全員が無事に笑顔で帰国できたことは、ガイドの高橋さんをはじめとするJTBの方々の手腕のおかげだと思っております。さらに、業界の第一線で活躍されている多くの技術者の方々と深い交流を持てたことは、私にとって何よりの財産となりました。皆様に深く感謝申し上げます。Civil Engineering Consultant VOL.266 January 2015067