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煉瓦の赤日本人は明治維新時に煉瓦の鮮やかな赤い色を目にして、これぞ文明開化、これこそ西洋文明と強い印象を受けた。まるで仏教伝来当時、法隆寺の丹塗りのまるばしら円柱に最先端の大陸文化を感じたように。朱色なり、煉瓦の赤は、時としてわが国民に新鮮な外国文化を記憶させた。実は煉瓦の赤い色彩を建築物の外観に見せる国は多くない。イギリスとオランダと日本くらいであろう。欧州諸国にしても北アメリカ大陸にしても、国会議事堂や中央駅など国家的な建築物は石材で仕上げるという基本姿勢が貫かれる。しかしイギリスやオランダは本国が狭いため、大量の石材を安定して供給することがかなわない。また両国は首都が大火にみま写真8東京大学工学部1号館の外装タイルわれ、都市を不燃化する必要に迫られる。そこで赤煉設は新しい次の課題を克服しなければならない。照る瓦を外観にむき出しにするという野心的な意匠を実践日、曇る日、雨も雪も降りそそぐ。建築物は日々、大自然すしたのだった。の時の流れを受け続ける。澄ました顔などしていられなわが国は両国との文化的なつながりが深い。煉瓦もい。メンテナンスの課題である。完成時に鮮やかで、あ多大な影響を受けた。その結果、日本人は外観に煉瓦か抜けしている事は当然ながら、年月とともに落ち着きが見えないと煉瓦造建築だと理解できなくなった。日本を増し、風格を身にまといたいものだ。人の生涯と同じ銀行本店や赤坂離宮迎賓館の外装は30cm厚の花崗岩で仕上げられているが、内側は約1mの煉瓦造壁体で支えられている。この二つの建物を煉瓦造だと説明しても、日本人にはピンとこないらしい。美しく老いる煉瓦さて素焼き煉瓦の良さは、どこにあるのだろうか。21世紀は科学技術の支えなくして、現代生活を保つことができない。その上、工学技術の中身が目に見えなくなった。調子の悪いパソコンの裏側を開けてチョイチョイと手軽に直せる人は皆無。最先端技術の恩恵を享受しながら、技術の基本を解っていない時代だ。一方、世界遺産登録の話題で盛りあがるなど、歴史性と大自然への現代人の関心は大きい。21世紀の隠された命題は、最先端科学と自然界の「両方イイとこ取り」なのか。ずい分、欲深な事だ。建築界を見渡しても、スレンダーな超高層建築の足元に、人工的に植栽された緑地が計画される。植物に限らず、水棲動物や蜜蜂などの昆虫を含む小動物をもまき込んだ生物界全体の小宇宙を具現化しようと試みる。自然界と無縁ではいられない今、建築作品・都市施写真9愛知県の鈴木煉瓦トンネル窯016Civil Engineering Consultant VOL.269 October 2015