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写真10同志社大学彰栄館く、作品たちも美しく老いる。かくありたい。しかしメンテナンス・フリー、お手入れ不要という大変に結構な建材には、泣き所がある。何年経過してもピカピカテカテカなのだ。元来メンテナンス・フリー素材の大半は、ツルツルしているおかげで汚れがつかない。ステンレス・スチールも、ガラス面も、施釉タイルにしてもじかん…。ところが歴史的景観を構成する建築群には、時間ぐすりむくろくしょう薬が掛かっている。無垢の材木の木肌、銅板の緑青、天然石の淡い黄ばみ、などなど。そこで素焼き煉瓦登場。新築時は鮮やか。それでいて10年、20年、100年後には、えも言われぬ老紳士。煉瓦を積む際、数段おきに躯体に緊結すれば、地震時も心配ない。外断熱層を保護する仕上げ材で、美しく老いることのできる素材候補は、思いのほか少ない。図1フランス積・仏積・フランドル積ながて水平方向に見ると、煉瓦側面の長手と煉こぐち瓦端部の小口がツートンツートンと交互に現れる。このボンディング・パターンは華やかだが、積む作業は煩雑だ。明治人はこの積み方を仏積、つまりフランス積と訳した。別の積み方もある。英国内のイングランドで考案されたイングリッシュ・ボンドである。こちらは英積すなわちイギリス積と、より広い連邦名で呼ばれた。壁には長手の段と小口の段が、上下交互に積まれる。この積み方は作業効率が良く、明治20(1887)年以降英積が多用された。興味深いことにイングランド本国でさえ英積より、いわゆる仏積の方が多い。日本では圧倒的に英積が多いので、世界一英積が採用された国だろう。他の積み方に、官庁舎や金融機関など高級な建築物に採用された小口積がある。これはドイツ積とも呼ばれ、明治19(1886)年来日の独人チームが官庁集中計画で実践した。壁面全体が小口ばかりで積まれる。また長手が数段かさなり小口が1段はいり、再び長手の段が数段現れるアメリカ積という積み方もある。仏積の代表は旧富岡製糸場、英積の例は原爆ドーム、小口積の好例は東京駅、そして米積は同志社大学彰栄館と礼拝堂である。図2イギリス積・英積・イングランド積煉瓦の積み方最後に、どれも同じに見えそうな煉瓦の積み方を紹介しよう。幕末明治初期にヨーロッパ人が伝えた方法は、フレミッシュ・ボンド。北フランスとベネルクス三国一帯のフランドル地方で発達した手法だ。煉瓦壁を図3ドイツ積・独積・小口積図4アメリカ積・米積Civil Engineering Consultant VOL.269 October 2015017