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特集4まちなみと煉瓦色彩?景観デザインの視点から見た煉瓦の可能性?加藤幸枝KATO Yukie色彩計画家自然やまちなみに溶け込んだ煉瓦建造物は風景画や風景写真の題材にふさわしいと思う人はたくさんいるだろう。それは煉瓦には他のマテリアルと異なる特性があるからではないだろうか。色彩的な観点から煉瓦の魅力を語っていただく。まちなみを構成する要素としての色彩地域に長くあるもの・蓄積されてきたものの色彩を知り、それらを尊重することにより地域固有の風景を育てて行くという環境色彩の手法は、フランスのカラリスト、ジャン・フィリップ・ランクロ氏が提唱した「色彩の地理学R」という方法論が基盤となっている。「地域には地域の色がある」という思考は、ランクロ氏が1961~1962年にかけて京都市立芸術大学建築科に留学していた際、着物に見られる独特の色彩、古い木のグレイやダークブラウンの微妙な色合い、何気ない日用品に使われている色のヴァラエティの豊富さなどに強く影響を受けたことが発端となっている1)。その後、自国に戻った際フランスの「土地の色」に着目するようになり、近代化により既に失われつつあったフランス独特の色を保存するという、特に文化的な見地からの研究が長く続けられた。ランクロ氏が実践してきた手法は環境を構成している様々な要素を総合的に捉え、色彩という切り口からまちなみの構造を明らかにしようとする試みである。まちの色にはその土地の気候・風土はもちろん、地域の文化(歴史、宗教、習慣)等が反映されており、ランクロ氏の3冊の写真集『Couleurs de la France(フランスの色彩)』『Couleurs de l'Europe(ヨーロッパの色彩)』『Couleursdu monde(世界の色彩)』では、地域の特徴の差異が素材と色彩によって明らかにされている。彩は、木造の住宅や釉薬の瓦、あるいは「塗装」ではなく植物から抽出した汁液等を発酵・熟成させたものを「浸透」させた木格子等、グレイッシュで深みがあり、繊細な色幅・色むらを持った「素材色」であった。しかし1960年代初頭の京都と現代の日本(特に大都市圏)とでは建築の外装材は大きく変化している。1970年代以降、均質な人工建材の激増、あるいはガラスや金属を主体とした高層建築物の林立により、さらに工法・構造の多様化により木や瓦、そして煉瓦等の素材は、特に都市部には「居づらく」なっているように感色・素材が「居づらい」現代都市ランクロ氏が日本を訪問した際に感動したという色写真1測色風景。対象物にJ I S色票等をあて、色相・明度・彩度を読み取る026Civil Engineering Consultant VOL.269 October 2015