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巻頭言Consultants四国はひとつ別枝修一般社団法人建設コンサルタンツ協会常任理事四国支部長2020年夏季オリンピック・パラリンピック競技大会は、「お・も・て・な・し」の心が通じ、東京で開催されることとなった。開催に向け、首都圏三環状道路の整備や首都圏空港の機能強化などの交通手段の確保、バリアフリー対策の強化が進められている。また、水環境の改善や魅力ある水辺空間を創造する取り組みなど、会場周辺の環境整備が推進されている。おもてなしの文化は日本全国にあるが、四国では四国遍路のお接待がそれに当る。四国遍路は、全行程1,400kmにもおよぶ厳しい道のりを、家内安全・病気平癒・先祖供養などを祈りながら、八十八ヶ所の霊場を巡拝していく旅であり、お遍路さんはその道中で、地元の人から幾度となくお接待を受ける。お遍路さんは、お大師様(弘法大師・空海)や仏様と同じと扱われ、道中で果物やお菓子、路銀などをお接待として手渡される。これらはもちろん無償の行為である。四国霊場八十八ヶ所は1,200年前、弘法大師・空海により開創されたことは有名であるが、四国遍路を一般に普及させたのは高知出身の大阪で活動した修行僧・真念であると言われている。真念は17世紀後半に四国遍路のガイドブックを出版し、その中で1~88番までの巡礼の札所番号を定め、遍路宿や標石を設置するなどの大衆化に大きく貢献した。四国遍路の父と称される真念の墓所は、高松市牟礼町の洲崎寺境内にある。このように、遍路の道は人々の心を繋げるお接待の文化を培ってきた。お遍路さんが行き交う四国の気候は温暖であるものの降水量には差があり、中央部を東西に走る四国山地を境に、洪水に苦しむ南四国と渇水に苦しむ北四国という対照的な地域となっている。偏在した水資源を有効に利用するために、四国の大河である吉野川の水は、早明浦ダムを中核とする吉野川総合開発による流域外への分水により、四国4県にわたる広域的な利用が行われている。空からの恵みを4県に分かち合い、地域の発展と生活を守っていく、まさに四国遍路の文化が受け継がれている。四国は四方を海に囲まれ、美しい海岸線や点在する島嶼部の景観が楽しめるとともに、内陸部では、険しい地形ゆえに深く刻まれた渓谷、切り立った山容、豊かな緑と清流が迎えてくれる。四国の持つ自然の豊かさ、美しさ、そして多様性は、誇るべき資産である。一方、地質は3本の大きな構造線が東西に横断しているため、各構造線に挟まれる地帯ではこれら地質構造に起因した破砕帯が多数存在し、全国有数の地すべり地帯となっており、非常に脆弱である。温暖でありながらも、ひとたび自然の猛威にさらされると、脆弱さから被害を受けることとなり、その規模によっては、本州との連絡が途絶え、中山間地域が孤立することが懸念される。また、南海トラフ巨大地震により広範囲に甚大な被害が発生することが危惧される。さらに、近年の気候変化の影響により洪水や渇水が激化する傾向にあり、台風等による水害・土砂災害が頻発している。そのため、地域の安全・安心の確保に向けた取り組みが重要となっている。特に、巨大地震・津波への備えとしては、東日本大震災の教訓を踏まえ、四国が一体となって取り組むべき施策「四国地震防災基本戦略」が、国・県等の行政機関、学識経験者、経済界等幅広い分野の方々の参加の下で策定され、防災・減災の取り組みが推進されている。地方創生や地域活性化が謳われる今日、四国4県が多様性を持ちつつも、昔から「おもてなしの心」と「四国はひとつ」の精神で助け合ってきた。これからも、その共通認識を持ち、次世代に豊かで安全・安心と活力ある四国を引き継ぐために、様々な課題の解決に向けて取り組むことが重要であり、私たち建設コンサルタントはその一翼を担っていきたいと考えている。