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表1煉瓦アーチ橋の諸元項目駅前道路橋梁(車道橋)丸池地区橋梁(人道橋)橋長10.00m7.86m径間割1径間1径間径間長5.0m5.0m有効幅員11.0m5.0m上部工形式練積み煉瓦アーチ練積み煉瓦アーチ下部工形式重力式橋台重力式橋台基礎工形式杭基礎(木杭)杭基礎(鋼管杭)活荷重TL-25tTL-25t循環型社会の実現に向けた取り組み国では、美しく良好な環境を保全するため、建設リサイクル等の推進に取り組んでいる。鹿児島県内では九州南部一帯に分布する火砕流堆積物のシラスやゴミ焼却灰溶融スラグ、砕石廃泥を材料の一部としたリサイクル煉瓦を製造し、これを舗装材料や壁材等の土木・建築工事に活用して、循環型社会の形成や地球温暖化対策に向けた取り組みを行ってきた。湧水町でも、人口減少や少子高齢化が進むなかで、合併直後から町の活性化を図るため、まちづくり事業に着手した。JR栗野駅や丸池湧水を中心に、近代化産業遺産である煉瓦アーチ構造物をまちづくりの中核として位置づけ、湧水町を含む4市町のゴミ焼却施設から排出される焼却灰溶融スラグを使用した、町オリジナルの「湧水ごんの子(ゴミ由来の)レンガ」と称するリサイクル煉瓦を製造し、アーチ式車道橋や人道橋、駅前広場や歩道の舗装に活用して循環型社会の実現に向け積極的に取り組んだ。煉瓦アーチ式車道橋の実現に向けて煉瓦アーチ構造物は明治から昭和初期にかけて、全国の随所で建設されている。ところが、現行の技術基準である道路橋示方書等では、その構造が拘束離散体であることから、その安全性を評価することが出来なかった。しかしながら、石造アーチ橋の移設復元(鹿児島市甲突川5石橋)や国内外のアーチ橋の視察等を通して拘束離散体構造の耐荷性の高さを確信した。この構造特性を参考に、煉瓦造りのアーチ式車道橋建設実現に向けて、実橋での載荷試験並びにシミュレーション解析により安全性の検証4)を行うこととした。一連の検証は、学識経験者からなる「煉瓦アーチ橋技術検討会」5)において、煉瓦アーチ構造物の特性や安全性の検証方法、試験結果、施工方法等について検討を重ねた。煉瓦によるアーチ式車道橋と載荷試験を行ったアーチ式人道橋の規模については、地形的条件や道路条件等から表1に示すとおりとした。基礎工形式については、地盤の支持力を確認した上で、アーチ式人道橋では支持層が比較的浅く、載荷試験を行うことから鋼管杭を採用し、駅前のアーチ式車道橋では、支持層は深いものの橋台底面が砂礫層であったことから伝統的な工法でもある木杭を採用した。煉瓦アーチの載荷試験載荷試験は煉瓦アーチ構造(中詰なしの状態)の上部2点に所定の荷重を与え、安定の状態を確認するとともに、要所に取りつけた変位計や歪みゲージにより、載荷時の変位や応力歪みのデータを取得した。載荷試験の装置図を図2に、実際の載荷試験装置の状況を写真3に、載荷試験の様子を写真4に示す。載荷試験の結果は三次元個別要素法によるシミュレーション解析に反映させ、当該構造体の安全性の評価を行うこととした。また事前に使用するリサイクル煉瓦の材料特性を調べるため、強度試験を行った。表2に強度試験の試験結果を示す。圧縮強度と弾性係数にバラツキの多い結果となっているが、これらはリサイクル煉瓦の製造過程における焼成温度等の微妙な違いによるものと考えられる。載荷試験は1層積みと3層積みの2種類と、幅1.0m、2.5m、5.0mの3種類を組み合わせて行った。載荷試験のケースと結果はシミュレーション解析結果と合わせて表3に示す。1層積みのケースA-11では47.4kNの荷重で座屈破壊を生じた。載荷荷重が小さいためリサイクル煉瓦自体の強度に問題が発生する状況になく、目地材の付着強度が荷重に耐えられず破壊に至ったものと考図2載荷試験装置図Civil Engineering Consultant VOL.269 October 2015031