ブックタイトルConsultant269

ページ
39/64

このページは Consultant269 の電子ブックに掲載されている39ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

Consultant269

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

Consultant269

たばの4社JVで実施されました。「海岸保全・再生に関する能力向上プロジェクト」では、モーリシャス本島を対象とした海岸侵食や高波被害等の海岸災害状況を調べ、対策が必要となる優先海岸を特定し、調査・分析や実証事業、継続的なモニタリングを実施しました。それを基に「モ」国の自然条件や社会経済条件に即した海岸保全計画を策定するとともに、今後「モ」国側で海岸保全対策を進める際に活用されることを念頭においた技術ガイドラインの作成と、これらの活動を通じて「モ」国の海岸事業や海岸活動に関わる関係者への技術移転および能力向上を図ることを目的として実施されたものです。■海岸侵食の実態とその要因これまで「モ」国では、数年~数十年に1回の割合で海岸に大きな被害を及ぼすサイクロンが襲来し顕著な海岸侵食が生じ、その後徐々に砂浜が回復する、といった海浜変化を繰り返しながら、海岸の平衡状態が保たれていたと推定されます。しかし1990年代以降、恒常的な海岸侵食が顕在化しています。その主な要因として以下の3点が挙げられます。1サンゴ礁の人為的改ざんに伴う波や流れ・漂砂の変化や、水質悪化および海水温変化に伴う海岸の砂供給源であるサンゴ環境の悪化2変動する海岸域での護岸や、突堤等の個別施設の構築等による連続した漂砂系の変化および自然の砂浜回復機能の低下3気候変動に伴う外力変化(海水位上昇に伴う波高増大、サイクロンの頻度、経路等への1967年2008年写真2 Albion海岸でのサンゴ礁地の変化影響の可能性)1については、特に1990年代後半よりサンゴ環境の悪化が明らかとなっています。写真2は島東部に位置するAlbion海岸におけるサンゴ礁地の約40年間の変化を示す空中画像です。1967年で見られる礁地内のサンゴ域の模様が、2008年には大部分が消滅し、礫や砂で覆われています。2の例としては、1990年代から海岸防護対策として実施されてきた変動する砂浜域での護岸構築が、反射波の増大や護岸前面での洗掘を助長し、砂浜の消失を招きました(写真3)。3については、潮位記録から示される「モ」国での最近30年間での海水位上昇量として平均約3.9mm/年と算定されました。これはIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告書に示される3.2mm/年(1993~2010年)に比べて若干高い程度です。しかし、サンゴ礁海岸では海水位の上昇が直接海岸に襲来する波の増大を招くため、多少の水位上昇量でも通常の砂浜海岸より大きな波高の違いを生じます。このような要因による海岸侵食問題は「モ」国だけでなく、現在サンゴ礁を有する他の多くの島嶼国でも見られます。■実証事業の背景「モ」国での近年の海岸対策は、護岸や突堤等の構造物対策を主としてきましたが、観光資源としての海岸の重要性を踏まえ、持続的な海岸防護と景観・海岸環境を両立できる保全対策が求められました。そこで本事業では、従来の自然の海岸が持つ防護・利用・環境の3つの要素を満たす「養浜」を、海岸保全対策の基本としました。この中で特に、「モ」国でこれまで保全対策工法としてほとんど実施されていなかった「礫浜」を、海岸が消失し高波・越波のリスクに曝されている海岸において、実証事業として実施しました。ここでは、礫浜の計画から設計・施工、更に施工後の継続的なモニタリングを、実施Civil Engineering Consultant VOL.269 October 2015037