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荷揚げ写真6事業実施後の海岸利用状況魚釣り礫浜の半分のエリアでは、礫の前面に砂も投入し、安定性や機能面に対する比較を行いました。礫材は「モ」国で大量に生成される粒径10~30mmの砕石を用い、砂も粒径2~4mmの砕石砂を用いました。写真5は、実証事業実施前後の海岸状況を比較したものです。コンクリート殻やゴミが山積していた海岸域に浜が形成され、見違えるような景観となりました。■事業効果工事は2013年12月に完了し約2年程度が経過しました。この間、約3ヶ月に1回の頻度で、関係機関と合同での継続的なモニタリングを実施してきました。なお、このような海岸モニタリングは、事業終了後も「モ」国政府により引き続き実施していく予定です。モニタリング結果から得られた海岸状況を、礫浜の安定性、海岸利用および海岸環境の3つの視点で示します。1礫浜の安定性工事完了後から1年半の間に、サイクロンが4回ほど接近しましたが、礫断面全体としては大きな変動は見られません。また沿岸方向への礫や砂の移動も想定内の範囲であり、安定した海浜が維持されています。今後「モ」国側で引き続き、長期的な安定性を確認していく予定です。2海岸利用事業実施後の日常的な海岸利用状況を示したものが写真6です。以前は、地域住民が積極的に海岸を利用したり遊んだりすることはほとんどありませんでしたが、礫浜形成後は日常的に海岸を散歩したり、魚釣りをしたり、ボートからの荷下ろし場として用いられています。住民アンケート調査からも、事業後の海岸利用が著しく増加した結果が示されています。3海岸環境以前は多くのゴミが山積していた海岸ですが、現在非常に良好な状況が維持されています。これは、事業を通じて実施した環境教育・広報活動により住民の海岸美化意識の向上が図られ、現在1ヶ月に1回程度の割合で、コミュニティによる自主的な海岸清掃が実施されていることが大きな要因と考えられます(写真7)。水質については、波による水際域でのシルト分の巻き上げが礫投入により抑えられ、以前よりも高い透明度が確保されています。また後浜域には自然の植生が見られ、今後海岸の安定化に寄与していく写真7 Grand Sable海岸での住民合同の清掃活動と思われます。■おわりに「モ」国で実施したJICAの海岸保全・再生に関する能力向上プロジェクトにおける実証事業を含めた技術成果は、「技術ガイドライン」として取りまとめ、今後「モ」国が実施していく他海岸への水平展開に活用されます。「モ」国にとって海岸は、単に観光資源としての位置づけだけではなく、人々にとっても憩いの場としての関わりが深く、政府、住民双方とも高い関心を持ち、保全の重要性を強く認識しています。「モ」国での海岸保全の取り組みが、同様の海岸問題に直面している他の島嶼国の手本となることを期待するとともに、本分野における我が国との引き続きの技術協力関係が続くことを願います。Civil Engineering Consultant VOL.269 October 2015039