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写真61984年架け替え前の猿橋写真8地元中学生の清掃活動写真7 現在の猿橋方法の策定等の調査が実施された。架け替えにあたり文化財としての価値を重視して、1851(嘉永4)年の出来形帳を参考に当時の姿(桔木を3列から2列)に復元することになった。ただし、文化財ではあるが歩道橋としても使用されるため、現行指針に基づく設計とすることと木材の調達が難しくなることを勘案して、桔木などはH鋼に木材を貼り付けた鉄骨造木装とした。施工に際し、行桁のたわみによる鉄骨部と木部の追従性について、実物大の梁を作成して載荷実験も実施している。このように景観と安全性を最大限に考慮した工事は、1980(昭和55)年度の仮設工事から始まり、1981(昭和56)年度に解体工事、1982~1984(昭和57~59)年度の組立工事と3期に分けて行なわれ、工事費3億7700万円をかけて完成し、1984(昭和59)年8月10日に竣工式が行われた。その姿は幅員こそ狭くなったが、老朽化していた以前の橋からは見違えるほどの美しい橋となってお披露目された。■後世に残る猿橋現在、猿橋の維持管理は大月市が実施している。2005(平成17)年から猿橋保存管理計画を策定、2010(平成22)年にはガイドラインを作成し、2018(平成30)年頃に点検・修復を計画している。しかしそれだけではない。毎週木曜には地元の中学生が猿橋の清掃活動を実施しているなど、住民と一体になって保守していることが窺える。猿橋のすぐ横には、東京電力八ツ沢発電所の第一号水路橋が通っている。1912(明治45)年に完成した鉄筋コンクリート造の重厚な水道橋で、こちらも立派な土木遺産である。また近くには岩殿城跡や東京電力駒橋発電所など歴史的文化遺産が数多く存在する。子供の頃から文化財に触れることができるこのような環境の中で、地元の文化財を大切にする心が根付いているのだろう。いつまでもこの光景が後世に残ることはもう約束されていると言っても過言ではない。<参考資料>1)『名勝猿橋架替修理工事報告書』財団法人文化財建造物保存技術協会/大月市、1984年2)『土木遺産の香猿橋』加藤貴史、「Consultant」214号、2002年3)『日本百名橋』松村博、鹿島出版会、1997年4)『群書類従』第11輯紀行部巻第337「廻国雑記」、塙保己一編、経済雑誌社、1983年5)『甲斐国志』松平定能編、甲陽図書刊行会、1912年6)パンフレット『日本三奇橋名勝猿橋』山梨県大月市7)大月市ホームページ(http://www.city.otsuki.yamanashi.jp/index.html)<取材協力・資料提供>1)大月市郷土資料館<図・写真提供>図2、3、写真4、6参考資料1P44上、写真3佐々木勝写真1、5、7塚本敏行写真2遠藤徹也写真8村山千晶Civil Engineering Consultant VOL.269 October 2015047