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■海運を支えた造船技術吉村─エジプトは砂漠の国ですが、実は、古代では最大の海運国です。北は地中海、東は紅海、真ん中はナイル川で、船がなければ移動できません。そのため造船技術にはすごいものがあります。深見─太陽の船(ギザの大ピラミッド付近で発見された2隻の船)を見た時には、こんなにすごい木造技術がどうしてあったのだろうと思いました。建築で木を使う場合は、わりと直線的に使いますが、太陽の船では微妙な角度を付けて安定を保っていました。吉村─太陽の船は解体して、埋設されていました。船は75%がレバノン杉で、エジプトの木も使っています。木は火であぶってカーブを付けます。ところが、4,550年経つと木が元のように真っ直ぐに戻ってしまい再現が大変です。木の両側には、番付けと呼ぶ記号が付いて、組み立てた時にはこの記号とこの記号が合うようになっています。樺山─今の日本の大工も行っているものですね。深見─接ぎ木だったり、仕口だったりというのもそうですね。吉村─一切、くぎも縄も使っていません。全部切り込みやはめ込みです。これが4,550年前の技術です。エジプトは石の文化だと皆さん思われがちですが、石で造る前には約1,000年間の木の文化がありました。■イスラム建築の三大発明司会─深見先生はイスラム建築の三大発明として、アーチネット、ムカルナス(鍾乳石飾りとも呼ばれる天井装飾)、二重殻ドームを挙げられていますね。深見─アーチは昔からありましたが、アーチを交差させるという概念はあまりありませんでした。半円アーチは19 5 6年群馬県生まれ。東京都立大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了。工学博士。東京大学東洋文化研究所客員教授、早稲田大学イスラーム地域研究機構研究院教授を経て、現在は日本学術振興会カイロ研究連絡センター長を勤める。著書に『イスラーム建築の見かた』東京堂出版、『世界のイスラーム建築』講談社現代新書、『イスラーム建築の世界史』岩波書店、共著に『イスラム建築がおもしろい!』彰国社など。深見奈緒子(FUKAMI Naoko)地中海世界にもあったといわれていますが、古代ローマの建築では半円アーチばかりではなく、上が少し尖頭形になっているものもあります。アーチを工夫して建築の見せ場にしていくのがイスラム建築だと思います。アーチを交差させたり、本来は平面の中にアーチがなくてはいけないのに折り曲げてしまったり、あるいはアーチを途中で切って隣と接合させることを始めたのがイスラムです。そこから出てきたのが、アーチネットです。その一つがスペインのコルドバにあるメスキータのドームです。同じような時期にウズベキスタンのブハラやイランのイスファハンなどの東方で、アーチを折り曲げるという考え方が出てきて、それを積み重ねることによってムカルナスになっていきました。そして有名なアルハンブラ宮殿の天井につながっていきます。二重殻ドームはイタリアのフィレンツェのドゥオーモ(サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂)が有名です。ドームを高くすれば目立ちますが、内側の見栄えがあまり良くないものになります。内側から見て、丁度良い高さにするにはドームを厚くしなければなりません。その際写真4コルドバのメスキータのアーチネット写真5王のモスクのムカルナス(イラン、イスファハン)Civil Engineering Consultant VOL.269 October 2015005