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土木遺産特別企画に、二重ドームにして内側と外側を離してしまえば、外側は目立つし、内側は丁度良い高さのドームができます。それを開発したのがイスラム時代だと思います。■ナイロメーターの秘密司会─「エジプトはナイルの賜物」と言ったのはギリシャの歴史家ヘロドトスでしたが、ナイロメーターというナイル川の水位測定所がカイロ以外にも多くあります。そうしたものが古代エジプト文明を支えていたと考えることができると思います。吉村─ナイロメーターは税金をどれだけにするか見極めるためのものです。当時、ナイロメーターは国家財政に関わる問題なので、地位のある書記しか見られませんでした。長年の経験から、氾濫の水位によって収穫量が統計的に分かっていました。そのため、ナイロメーターは非常に大事で隠れた所にありました。ルクソールのカルナック神殿では、神殿内にナイロメーターを造り、神官がそれを見て、領地の収穫量を推測していました。司会─土木施設は、その当時の社会の仕組みも読み解いていかないと分からないということでしょうか。吉村─当時の土木施設は全部王様のものです。国家の先を読むことも全て王の権力の中に入っています。■社会基盤を造ることの意義司会─ローマではアッピア街道を筆頭に街道のネットワークがあり、水道施設もあちこちに残っています。どうしてローマ人はインフラを造り続けたのでしょうか。樺山─今風の言葉で言えば社会基盤と呼んでいますが、昔風に言えば土木ですね。「土」と「木」と書くくらいだから、一つ一つの作業や行為が荒っぽくて力も要る、コストもかかる、当然犠牲もありました。しかし、それに19 5 6年埼玉県生まれ。東京大学大学院(都市工学)修士課程修了。世界各国の都市計画プロジェクトの総括として活躍する。手掛けた都市計画にはカイロ(エジプト)、ナイロビ(ケニア)、ヤンゴン(ミャンマー)、アスタナ(カザフスタン)などがある。共著に『土木遺産Ⅰ、Ⅱ』ダイヤモンド社。当協会会誌編集専門委員などを歴任。現在、日本工営株式会社技師長、黒川紀章建築都市設計事務所代表取締役。司会:山田耕治(YAMADA Koji)よってローマ帝国の存在意義が説明されます。また、帝国がなければ基盤工事ができないという相互関係があり、やはり帝国は土木、社会基盤だとしか言いようがない気がします。英語ではシビル・エンジニアリングですから基盤工学が一番近いですが、それが重大なものだというのは、社会が構成されるためにインフラが極めて重要だという歴史上の事情もあるのです。建築はデザインに重きを置いているため、華やかにみえます。しかし土木で取り扱っている構造力学やコスト計算はより規模の大きい産業であり学問ですから、これはもっと応援しないといけないと考えています。吉村─土木っていい響きだけどね。樺山─私も好きです。道路、河川、橋でも、建設の現場で行なわれていることについて、私たちもその歴史を語るべきでしょう。まだ解明できてないところも含めて、社会基盤工学に対する期待はとても大きいです。歴史に関しては、まだ分からないことが沢山あります。深見─土木と建築は、昔は分かれていなかったと思い写真6カイロ・ローダー島のナイロメーター(9世紀に再建されたもの)写真7アッピア街道(イタリア、ローマ)006Civil Engineering Consultant VOL.269 October 2015