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特集トイレ?日本のトイレが世界をもてなす?2排泄のメカニズム中野美和子NAKANO Miwakoさいたま市立病院小児外科部長「おぎゃあ」とこの世に生を受けた瞬間から発生する排泄問題。食べ物が体内で消化・吸収され、最後に便となって排泄されるメカニズムは、人間の最も基本的な機能である。ここでは、排便までの身体のメカニズム、そして排泄とトイレとの関係を考える。排便のことを理解するふつう、人は身体のことなど考えません。考えるのは、病気、けがの時でしょう。中でも排泄は、動物にとってとても基本的な機能の一つなので、いちいち考えたりはしません。排泄は、広い意味では、呼吸も、発汗などの皮膚からの分泌も含まれますが、ふつうは排尿と排便のことを指します。ここでは、私の専門分野である排便のことを述べ、少し関心を持っていただきたいと思います。私は小児外科という、こどもの胸腹部の病気を治療する仕事をしているのですが、その中に、先天的に排便ができない、難しいという病変があります。それを手術で排便ができるようにするのですが、治療に当たっては病態、排泄のメカニズムを知ることが必要です。それで小児外科医は、以前から排便についての専門家ということになっています。今は、おとなにも、排便機能の専門家、専門の病院ができています。排便ができない病気では、手術の後も、100%ふつうになるわけではありません。病気の程度により、ほとんど問題ないというかたから、日常生活を送るために、ふだんから薬や処置などが必要なかたまでいます。赤ちゃんの時に手術をして、おとなになるまで、生活のコントロールを指導するのも私たちの仕事です。たくさんのかたをみていると、こどもの時には問題が残っていても、おとなになるととてもよくなる、あるいは自分でコントロールできるようになるかたが多いのです。排便は総合的な能力で、おとなに成長することが、かなり関係しているのだということを実感しています。それとともに、このかたたちの相談にのっていると、排便に問題がある、ということを世の中ではなかなか理解してもらえない、ということも実感しています。食べれば便は出るものだと決めていますからね。先天的な病変はないが排便がうまくいかないという、「慢性機能性便秘症」のこどもたちも扱っているのですが、このかたたちも、病変がないのだからうまくいくはず、ということで、病気で困っている上に、困っていることをわかってもらえない、という悩みを抱えています。もう少し、排便のことを知ってもらってもよいのではないでしょうか。排便のメカニズム私たちが摂った食物は、食道・胃・十二指腸・小腸と進み、この間に栄養分が消化吸収されます。その過程では、さまざまな消化酵素、消化管ホルモンが関与し、大量の水分がやりとりされます。残りのものが、水様便の状態で大腸に移動します。大腸では水分が吸収され、便が形成され、排泄されます。小腸から食べたものが大腸に移動するまでには、数時間ぐらいなのに、大腸に入ってからは、半日から1日以上かけて排便にまで至かこうります。大腸の中でも、左側(下行結腸)まで到達するのにかかる時間は数時間で、水分が徐々に抜けて半固形状になるのですが、その先のS状結腸で、しばらく留まり、「バナナ型」などの形のある便ができます。おとなの便秘症のかたでは、このS状結腸に長く便が停滞しています。だいぜんどうS状結腸に留まっている便は、大蠕動という大きな強い蠕動運動で直腸に移動し、排便の一連の動きがおきます。大蠕動は1日に1~3回おきる波で、まとまった012Civil Engineering Consultant VOL.271 April 2016