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Consultant271
写真6大学院生と遊ぶ児童(小学校)写真7トイレ完成披露式(小学校)の要望を作成し、相手チームに要望書として渡します。一方、相手チームの要望を聞いてトイレのプランニングに反映するという、オーナーと設計者双方の立場を体験しながら設計を行うまでに至りました。写真5はトイレ改修完成の2カ月後に学校で撮影したものです。これは「トイレをきれいに使ってもらうにはどのようにしたらいいか」を自分たちで議論し、その結果「啓発ポスターを作成して掲示する」という生徒の自主性や意識の変化が感じ取れた一面です。小学校の取組み平成25年度からは、小学校で参加型のトイレ改修工事を進めていくことになりました。小学校を対象にした場合、トイレに対する想いにバラつきが大きく、本当に児童たちが望んでいるトイレを創ることができるのか心配でした。その不安を解消するため、小学校のワークショップではこれまでの児童、学校、市担当者に加え、「活動の通訳者」として、また「総合プロデューサー」として大学院生を起用するという新たな取組みにチャレンジしました。これは中学校を対象にしたときと同様、児童たちと仲良くなり、さまざまな活動を通じながら、本当に望んでいるトイレは何かを見出し、それを実現させることで、児童たちが新しくなったトイレに行くことが楽しみになり、「自分たちが考えたトイレだから大切にしよう」と愛おしく思う気持ちを育んでもらいたいと考えたからです。まずワークショップで、大学院生たちは、児童たちから意見を聞き取るために仲良くなることから始めました。チームで色をそろえた上着を着て、一緒に遊んだり給食を食べたりして、一気にその距離を縮めていきました。次に、学年ごとに「理想のトイレ」を絵に描いてもらいました。「ピカピカのトイレ」や「全自動トイレ」などのトイレに対する夢や希望が寄せられました。それに対し大学院生たちから、「絵やアンケートで済ますうわべだけの取組みではなく、新たなプログラムによってもっと掘り下げていきたい」との建設的な意見が出されました。そこで提案されたのが、空き教室に実物大の模型を作ることでした。大学院生たちは児童たちと段ボールで作った「便器」に腰掛け、個室(ブース)の大きさや棚の高さを検証するなどして、設計につながる新たな情報を得ました。この貴重な経験を通じて、児童たちの想いを設計プランに反映し、工事へとつなぎました。これらの取組みは平成27年度で3校目となり、既に2校の工事が完成しています。中には、トイレに行くことが楽しみに感じられるように「7色に彩られたカラフルなトイレ」や「ブースを潜水艇に、周囲の壁を海に見立てて魚の絵を描いたトイレ」などがあります。児童たちが楽しくなるように雰囲気を重視したトイレや、高学年用として少し大人っぽいトイレなど、私たちが今まで考えつかないようなプランが実現できました。固定概念が最大の壁このように、大学院生たちの活動は児童たちの意見集約をはじめ、設計や施工の体験プロデュースにまで及びました。私たちは市担当者としての役割を見直し、可能な限り大学院生たちに任せ、それらの取組みが脱線しないよう見守ることに徹しました。ここで私たちが心がけたのは、中学校であれ小学校であれ、生徒や児童そして大学院生に対しプランや企画を参加型として委ねたのなら、担当者の概念を覆すような結果が出たとしても、学校として守らなくてはならな018Civil Engineering Consultant VOL.271 April 2016