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Consultant271
写真4、5市民による災害用トイレの組み立て訓練(H25.9.1実施の兵庫県・播磨広域・姫路市合同防災訓練)用上の留意点の確認が必要である。避難所など自治体や比較的大きな組織では、4組立トイレ、5仮設トイレが有効な方法である。組立トイレは、折りたたみ式で搬送や保管が容易である。便槽に貯留する方式と、マンホールへ直結して流下させる方式があり、手すりが付いているタイプや便座の高さを調節できるタイプもある。ただし課題として、訓練等で組立方法を習得する必要があり、さらに安定稼動させるうえで、汲み取り方法や汲み取り体制など、維持管理のルールが必要である。また簡易な仮設物であることが多いため、余震や強風等に対し、安心して利用できるよう固定させる必要がある。仮設トイレは、組立トイレをより強固にしたものでありイベント時や建設現場で利用されることが多い。ただし東日本大震災で被災自治体に行ったアンケートでは、発災から3日以内に仮設トイレが到着したと回答したのは全体の約1/3の自治体であり、4日から1週間が約2割、1週間から2週間が約3割、それ以上も約2割と、仮設トイレを必要十分に調達するには、輸送方法や需給バランスから多くの時間を要していた。「わがこと意識」が災害時のトイレを考えるきっかけになる災害時のトイレは、命に直結する問題であり、私たち1人1人が「わがこと」として、人まかせ自治体まかせにせずに備えなければいけない。それには、平常時から災害時のトイレの理解を深めることが重要である。防災対策が進んでいる地域では、行政が市民と一緒になって災害用トイレを組み立てたり、運用ルールを作ったりする訓練を行っている(写真4、5)。また、防災に関する研修や地域のイベントなどの機会を通じて、実際に災害用トイレを使う・段ボールトイレを作るなど体験型の学習機会を広げる必要がある。さらに、学校等防災教育や地域と学校が連携した訓練を通じて子どもたちにも体験してもらい、トイレの清掃意識などを高めることも効果的と考えられる。黒田裕子さんは、冒頭に述べたHさんに対して、健康状態のことを考え、仮設トイレを待っている時間帯の工夫をした。椅子を設置することで、待っている間の負担軽減になる。また、雨が降ったときの工夫としては、テントの設置があればよいと考えた。そして、暗いときの外のトイレも危険度が高いので、足元の小さな光があればとても安全と考えた。ちょっとした寄り添いが、その人の支えになる。私たち1人1人の災害時のトイレに対する「わがこと意識」が、いざ本番となったときの「あわてない態度」や「起きてしまった事態への対応力向上」につながるのである。2014年4月、兵庫県・避難所等におけるトイレ対策検討会は『避難所等におけるトイレ対策の手引き』を発行した。手引きの対象者は各自治体の担当者であるが、1人1人の住民にとっても災害時のトイレについて必要十分な知識を得ることができる。ぜひインターネットで検索していただきたい。この記事も本報告書から多くを引用させていただいた。そして本検討会は、黒田裕子さんや、特集6を執筆されている日本トイレ研究所の加藤篤さんにもメンバーになっていただいた。私は座長としてとりまとめを行ったのだが、私こそが一番勉強になった有意義な検討会であった。<写真提供>写真1、2、3日本トイレ研究所写真4、5兵庫県Civil Engineering Consultant VOL.271 April 2016023