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Consultant271
100806040南アジアではMDGsでトイレが改善したのは最富裕層から2番目と中間層まで94868774775685141867661932494屋外排泄衛生的でないトイレ衛生的なトイレ最貧困、貧困層では屋外排泄が3分の2を超える。%(2013)10090タジキスタン8070MDGs目標値の77%ライン6050カンボジア40バングラデシュカザフスタンラオス208436457 518 19402 7 819952008 19952008 19952008 19952008 19952008最貧困層下位20%貧困層下位20%~40%中間層40%~60%富裕層上位60%~80%最富裕層上位20%図3南アジア所得5層別トイレ状況値としていた。1990年時点では全世界でトイレ未使用の人口が46%いたため23%が目標値、すなわち全世界で77%の人が衛生的なトイレを利用することであった。しかし糞口感染症等を引き起こさないための感染経路が遮断されている、と定義される「改善されたトイレ(improved sanitation facility)」利用にいたっては2015年末の集計データでは68%にとどまり、世界全体では目標値を達成することはできなかった(図2)。もちろん努力がなされていなかったわけではない。南アジア全体のデータ等を見ると、MDGsで大きく改善したのは準富裕層と中間層である(図3)。貧困層より下になると、屋外排泄(open defecation)の改善はわずかなものになる。MDGsで恩恵を受けたのは中間層より上の層だったということになる。2015年の『世界子供白書』(UNICEF)2)のデータを用いて世界銀行の融資下限である一人あたり年間所得(GNI)1,235ドル付近未満の35カ国を取り出して、「改善されたトイレ」使用率(データは2013年)を縦軸に、所得を横軸にして散布図を作成した(図4)。するとこの低所得国グループでMDGsの目標値である77%を上回ったのは、カザフスタンとタジキスタンのわずか2カ国だけであった。各国ともMDGsはたやすく改善の進む都市部で成績を上げていたのだ。トイレのような、農村が大きく遅れている課題は達成を諦めざるを得なかったのだ、と推察せざるを得ない。トイレの利用がそもそも進まなかった国々を分析すると、農村部の割合が大きく、道路などのインフラがない、という理由の他に、屋外排泄が減っていないことがデータから読み取れる1)。屋外排泄が減らないのは国民の教育水準が低いからだ、と多くの日本人は顔を歪めて指摘するだろうが、実際は屋外排泄に適している環境があるからである。すなわち、排泄に手ごろな、排泄302010インド00 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600 1,800米ドル(2013)図4世銀指定貧困国のトイレ普及達成率表1屋外排泄の多い国とその推移国名1990年の屋外排泄実施率(%)2012年の屋外排泄実施率(%)エチオピア92%37%ネパール86%40%ベトナム39%2%カンボジア88%54%アンゴラ57%24%バングラデシュ34%3%パキスタン52%23%出所:WHO/UNICEF, Joint Monitoring Program 2015物を容易に処理してくれる川や池、海、湖がたくさんあるというのが理由である。なぜ屋外排泄は減らないのか東アジアにあって屋外排泄が減っていない国の一つが、経済発展目覚ましいカンボジアである(表1)。首都プノンペンなどでは洗練されたビルが建ち、教育水準も高くなってきている。しかしデータを細かく見ると、この国の真ん中に鎮座する大きなトンレサップ湖の周りには今も多数の湖上生活者がいることがわかる。湖上生活者の家々は湖の上にあり、当然生活排水も排泄物も瞬時に湖に消えていく。このトンレサップ湖周辺の湖上生活者の衛生習慣は深刻で、排泄習慣の改善にアジア開発銀行(ADB)も資金を拠出して、国連環境計画(UNEP)と韓国が協力を開始している2)。ネパール、バングラデシュ、ミャンマーなども農村部に行くと、急峻な山からの湧水を集めた川や地平線近くまで続く草原の中で静かに水をたたえた池があちこちに見られ、その向こうにゆったりと静かに流れる川が目に付く。絶好の天然トイレがたくさんあるのだ。また、子供が多い国では屋外排泄が一般的になっていることがある。子供は殆どトイレを使わない。21世紀に入って最初に独立した国、東ティモールの国民の平均年齢は18歳である。この国ではUNICEFの支援と王子Civil Engineering Consultant VOL.271 April 2016025