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力であり、難題でもある。本稿では、これまでの活動を踏まえ、トイレからの社会づくりと成長戦略について考えてみたい。国が提案するトイレ施策2014年11月、内閣官房すべての女性が輝く社会づくり推進室は、暮らしの質の向上に向けたトイレに関する国民からの提案募集を実施した。そこに寄せられた内容としては、「行列の解消」「広さ」「明るさ」「お年寄りの使いやすさ」「子連れでの使いやすさ」「床のきれいさ」「災害時の衛生状態の向上」「防犯ブザーの設置」等があった。これからのトイレは、機能の確保から質の向上へと進化することが期待されている。これを受けて2015年5月、有村治子女性活躍担当大臣の下で開催された「暮らしの質」向上検討会において提言が発表された。この提言では、「排泄」は人間の尊厳にも関わる行為であり、個々人の暮らしの質に強く影響を与える重大事であると位置付けている。また、トイレの清潔性、快適性、安全性を向上させることが重要であることに加え、外交、成長戦略、防災、地方創生の観点からも重視し、快適なトイレを増やすための各般の取り組み「ジャパン・トイレ・チャレンジ」を実施すべきと示した。具体的には、表2に示すとおり6つの施策となっている。国がトイレに関して全体的な方針を示したことは、少なくともこれまでの30年間では初めてである。この貴重な取り組みを社会に定着させることが必要である。トイレ表2ジャパン・トイレ・チャレンジの施策項目内容1快適性・清潔性・・表彰・事例集の作成、トイレ情報の提供安全性についての施策・トイレに関する「基本的な考え方」の提示・学校や公園等のトイレ・公衆トイレの安全性の向上・トイレにおける広告掲出・女性の職域拡大2国際貢献・ODAを活用した途上国支援等・女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム(WAW!2015)3成長戦略・経済成長・国際規格の開発・訪日外国人向け魅力発信・クールジャパン4防災・避難所のトイレの改善・避難所のトイレのモデルケースの提示5地方創生・地方の公共トイレ改善に向けた好事例の発信・広告収入を活用した地方の公共トイレの維持管理の強化6ユニバーサルデザイン化の推進─写真1の改善は、トイレそのものを改善することだけが目的ではない。トイレは生活そのものであり、それぞれの暮らしや社会が抱える課題が凝縮している。だからこそ、みんなで話し合うことに意味がある。トイレの改善をきっかけに、その先にある健康づくり、都市づくり、地域創生、国際平和などにつなげていきたい。世界をもてなすトイレプロジェクト2020国が立案した「ジャパン・トイレ・チャレンジ」を具現化していくためには、公共トイレの設置・管理者である地方自治体や民間企業等、トイレをつくる設計者やメーカー、そして利用者とのコラボレーションが必要である。日本トイレ研究所は2014年11月に「トイレに、愛を。フォーラム(写真1)」を開催し、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、文化や性、障害などにかかわらず、すべての人が使いやすいトイレ環境を目指す「世界をもてなすトイレプロジェクト2020」をスタートさせた。このプロジェクトでは、トイレの困りごとに関する声を集めるアンケートを実施し、目標とした2020件を上回る声を集めることができた。このアンケートで明確になったことが3つある。1つ目は、トイレへの要望で最も多くあげられたことは清潔の保持であるということ。汚れにくい、掃除しやすい、きれいに使いたくなるトイレのあり方を追求する必要がある。これは、世界の衛生問題の解決にもつながる。2つ目は、日本のトイレは二極化しているということ。商業施設等のトイレは顧客サービスの一つとして位置づけられ、集客や顧客満足度、事業収入に貢献することが期待されているため、利用者のニーズにあわせて保健・廃棄物の専門家、盲導犬ユーザー、L G B T団体、外国人、車椅子ユーザーでトイレについて話し合ったパネルディスカッションCivil Engineering Consultant VOL.271 April 2016029