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Consultant271
図9地区計画パンフレット図8地区計画の位置災害弱者が利用する施設等)の立地が進行する可能性があった。平成27年8月、都市計画マスタープランの土地利用方針を踏まえ、良好な環境や景観を阻害するおそれのある建築物等の規制・誘導を図る特定用途制限地域(約101ha)を導入し、決定した。■地区計画の決定復興にかかる事業区域については、将来のまちの目標、良好な都市環境や魅力的な街並みを形成するとともに、安全で快適な市街地の形成を目指し、地区計画(建築物の用途・高さ・意匠、垣さく高さ、地盤面の高さ等)を平成27年8月に決定した。今回、地区計画を決定した地区は、震災復興土地区画整理事業区域で住宅地を形成する4地区(町方地区・安渡地区・赤浜地区・吉里吉里地区)及び、企業への誘致先として主に水産加工場や食品加工場などの工場を建てる産業集積地2地区(町方津波復興拠点地区・安渡津波復興拠点地区)の計6地区約74haである。住民説明会の際、「自分が建てる家にはどのような規制があるのか」等の質問が多数寄せられたため、用途地域のパンフレットとは別に、用途地域(第一種低層住居専用地域・商業地域・準工業地域・第一種住居地域)に地区計画の制限がかかる内容をイメージ図で表現したパンフレットを作成した。また、地区計画が定められた区域内では、都市計画法第58条の2(建築等の届出等)により建築する場合、市町村長の許可が必要となる。地域住民の住宅再建や企業の建築の際、地区計画の申請をわかりやすく伝える『地区計画の手引き』も作成した。■屋根不燃化区域の変更大槌町においては、市街地の火災の危険を防ぐため指定される防火地域や準防火地域は指定されておらず、建築基準法第22条区域に基づく屋根不燃化(建築物の屋根を不燃材料で作らなければならないとする規定)区域指定がなされていた。平成27年6月、今回の用途地域の変更等に伴う土地利用の適正化を図るため、その指定区域が約30ha縮小された。■おわりに今回、被災地大槌町の都市計画業務を受け、都市計画マスタープランの策定に始まり、住民に分かりやすいパンフレット作りと住民説明会を通じて、都市計画の見直しを行った。用途地域約20ha減により復興計画に掲げる都市のコンパクト化、さらに、特定用途制限地域及び地区計画の導入により良好な都市環境や街並みへの誘導ができたものと考えられる。東日本大震災が起こった平成23年3月11日から5年。多くの人の力が集結され、事業を推進しているものの、今なお、大槌町のまちづくりは道半ばである。まちを復興していくためには、被災現状等調査と問題点・課題の整理、上位・関連計画との調整、住民合意形成を図った復興事業の検討、土地の取得等の調整と設計の後、現場で実現(施工)していくという、時間軸を合せた重層的な取り組みが進む中で、都市計画(土地利用・都市施設・市街地開発)を定めていくことが必要となる。住民が待ち望む「まちの復興」は、なんと緻密な作業の連続であることか、改めて知る思いである。この時代に生を受け、復興に携わることができることの有り難さを胸に、今後も誠意を込めて取り組んでいきたい。<資料提供>岩手県大槌町Civil Engineering Consultant VOL.271 April 2016037