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する。場所や時間などによってどんな危険な生物に遭遇するかわからない、という不安がつきまとう。メコン川をずっと下ったときは川や沼が排泄場所だった。またそこが日常生活の取水の場所であったりする。自然界と人間が病原菌や寄生虫の連鎖にさらされていたりするのだ。思いだすままに書いていったら本当にキリがない。危険への注意がまさり、羞恥心などはとうに消えてしまっているエリアなどもあり、ワイルドな旅を重ねていると「人間の根源的な強さ」のようなものを知らず知らずのうちに体得していたりするのだ。そうして次第に確信していったのは、日本のトイレ事情は世界に冠たる水準にあるな、という体験的結論だった。日本が世界に誇れるのは「水と夜とトイレ」の三つだ、とぼくは思っている(水と夜についてはちょっと長い説明がいるから省く)。日本のトイレの優れているところを要約していく。まず一番に言えることは清潔である、ということ。商業施設や駅や空港などに代表される必要不可欠な基本的にサービス機能をもつトイレから、町中や公園の公衆便所にいたるまで、定期的に清掃消毒されていてきれいである。ドアや便器や水洗システムなどが故障したりするとすぐに修理される。トイレットペーパーなどの備品が備えつけられ、きちんと補充されるところが多い。世界のトイレ事情からみるとこれは「奇跡」に近いといってよいだろう。さらに「安全」という面も世界一といっていいだろう。欧米の先進国のトイレもかなりきれいに管理されてきているが、場所によってはさまざまな犯罪の温床になっている場合も多く、アメリカのあるエリアなどは警官でさえ近づかないデンジャラス・トイレが存在する。日本のトイレは利用する人のマナーも概ね良好、ということも付け加えておく必要があるだろう。中国・敦煌(写真:平田潔)椎名誠SHIINA Makotoプロフィール1944年東京都生まれ。作家。1979年より小説、エッセイ、ルポなどの作家活動に入る。これまでの主な作品は、『犬の系譜』(講談社)、『岳物語』(集英社)、『アド・バード』(集英社)、『中国の鳥人』(新潮社)、『黄金時代』(文藝春秋)など。近著は、『孫物語』(新潮社)、『寄食珍食糞便録』(集英社)、娘・渡辺葉と共訳を手がけた『十五少年漂流記』(新潮社)。最新刊は、『おれたちを笑え!わしらは怪しい雑魚釣り隊』(小学館)、『雨の匂いのする夜に』(朝日新聞出版)、『おなかがすいたハラペコだ。』(新日本出版社)など。企画・プロデュースした『旅ゆけばヒトモノケモノバケモノと会うとつげき!シーナワールド!!4』(椎名誠旅する文学館)を2015年10月に刊行。趣味は焚き火キャンプ、どこか遠くへ行くこと。公式インターネットミュージアム「椎名誠旅する文学館」http://www.shiina-tabi-bungakukan.com(2016年1月現在)Civil Engineering Consultant VOL.271 April 2016007