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物、水菓子は小菜盛りである。卓袱は中国風なのでテーブルの上の各自の席には2とんすい枚の取り皿と盃、湯匙、箸が用意してある。昔は肉類を食べるのに最も便利であったという象牙の先を銀張りにしたものや竹が使われていたが、現在は柳箸を用いる。器から自分の皿に取るときは、取り箸を使わず、自じきばし分の直箸や湯匙で取り分ける。器に盛ってある料理は、食卓を囲む人たちが「おもやい」で食するよう人数分だけ盛ってあるので、おいしいからといって他の人の分まで食べることは許されない。上には小菜が並べられている。小菜は刺身、湯引き、口取り、酢の物、揚げ物、豆の蜜煮などで構成され、殆ど冷たいものである。客人が揃って席に着くとすぐ温かひれい「お鰭」が1人ずつに運ばれるが、それまでは「おしながき」に目を通しながら、私語を謹んで静かに料亭おかっつぁま写真5豚の角煮(料亭「春海」)の女将の「お鰭をどうぞ!」の言葉を待つ。この挨拶には、客人をもてなす側、つまり料亭の心意気が示されている。この挨拶で宴会が始まり、お鰭を食し酒を酌み交わすのが慣わしである。「お鰭」と呼ばれるのは、客1人に鯛を1尾使ったという証拠に鯛の鰭を一つずつ添えるからだが、これは祝儀と歓迎の意も表す。この汁物の味加減で料亭の気配りを感じるわけだが、一口食したとき薄く感じても、最後の一口で丁度よかったと思わせるようなおいしい味付けが工夫してある。この後、メインになる鉢物や炊き合わせの煮物など温かい料理が次々に運ばれる。最後に、ご飯、香の物(漬け物)、水菓子(果物)、梅椀(汁粉)が供されるが、ご飯や梅椀は一人ずつの食器に、香の図2川原慶賀筆『唐蘭館絵巻・宴会図』長崎卓袱料理に学ぶ長崎卓袱料理の経緯をみると、先人たちは会食を通して他の人たちと交流を深め、自分自身の教養や文化的価値を高めている。懐石膳の取り回しの作法も卓袱の影響が強いとされる。長崎卓袱料理は一つの皿に盛られた料理をおもやいで食べるため、お互いがよい雰囲気の中で食事ができるような配慮が必要である。ふうてい「風は態を為す」という言葉があるが、その場に相応しい態度、動作、言葉づかい、肘をつかないで背筋をシャンとのばして会食するなど、基本的な礼儀作法は心得ておきたいものである。最もおいしいと感じる状態で食べるのが、料理をつくってくれた人へのマナーである。会食で食べ残すことはマナー違反であり、人間としてのたしな嗜みにかけている。卓袱料理を通して、自己中心的になりがちな私たちの日常生活を省みたいものである。Civil Engineering Consultant VOL.272 July 2016021