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巻頭言Consultants「自律した建設コンサルタント」に向かって花岡憲男一般社団法人建設コンサルタンツ協会常任理事本号は「長崎」が特集テーマです。長崎を舞台に、ポルトガル、中国、オランダ、ドイツ、イギリスといった諸外国の文化・技術がどのように育ってきたか、いろいろな視点からの特集記事がお楽しみいただけると思います。欧州諸国の中で幕末まで唯一貿易関係のあったのがオランダです。明治に遷ったときに、オランダ人技師ジョージ・アーノルド・エッセルやヨハネス・デ・レーケが内務省土木局に招かれ、当時の土木事業に功績を残しました。福井県三国港突堤(通称エッセル堤/現福井港)はエッセルが計画し、工事はデ・レーケのもとで行われました。そだちんしょう基礎に使われた粗朶沈床は、日本で初めて用いられた当時の最新技術とされています。デ・レーケは、1873(明治6)年から1903年の30年にわたり、木曽三川分流事業、デ・レーえんていケ堰堤(群馬県)等の河川改修、砂防、築港に携わりました。事業の達成や土木技術の向上におけるオランダ人技師たちの功績は大きいと思います。一方、低地国で河川勾配の緩いオランダから来た技術者が、急流河川の多い日本で活躍できたのは、日本の自然環境・風土で培われた日本人技術者の経験が支えになっていたからだと考えます。海外の新しい技術を学ぶ姿勢やその技術を日本の国土に応用する工夫、こういった取り組みが土木技術の急速な向上に繋がったのではないでしょうか。土木工学は社会基盤を扱う技術分野で、他の技術分野ではカバーできない残りの部分のすべてを扱っています。その分、技術分野は多種あります。土木以外も含まれますが、建設コンサルタントの登録部門は21部門もあります。これまでの建設コンサルタントは、社会基盤整備(公共事業)に携わる中で、登録部門相互の連携・協働を基本として仕事をしてきたように思います。今、我々建設コンサルタントを取り巻く社会環境は、社会からのニーズが多様化していることに伴い変化しています。キーワードを挙げると「エネルギー」「福祉」「教育」「高齢化社会」「人口減少」「地方の活性化」等々で、こうした多様なニーズへの対応が求められています。今までの分野とは異なる技術や事業分野と守備範囲がラップすることも増えています。野球だと守備範囲がラップしたときは、選手同士が衝突しないように連携、バックアップします。我々の仕事も同様で、異分野・異業種との連携が必要となる場面が多くなるでしょう。5月9日号の『日経コンストラクション』では、建設コンサルタントを対象とした特集「“設計”だけでは未来なし」の中で、各企業の国内外における新しい事業分野への展開の事例が紹介されていました。新しい事業展開や事業のマネジメントに関わるとなると、経済や法律の知識が必要となる場面も増えるでしょう。企業内の管理部門が持っているノウハウが活かされて、利益確保に寄与する場面も出てくるのではないでしょうか。こうした社会環境の変化への対応は、企業や技術者が能動的に取り組まなければ成果はあげられません。まさに、当協会がビジョンに掲げる「自律した建設コンサルタントへの転換」が必要です。一方、社会基盤は国民の生活に欠くことのできないものです。不要となることはあり得ません。社会基盤整備を将来にわたって継続し、携わる建設コンサルタント企業と技術者が成長し続けるためには、「これまで経営を支えてきた分野」の伝承や技術の向上を怠ってはなりません。会社の得意分野やカバーエリアを活かしながら、「これまで経営を支えてきた分野の強化」と「新たなニーズへの対応」にバランスよく取り組み、真の「自律」に向けて進みましょう。