ブックタイトルConsultant272

概要

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表1長崎奉行着任者（1625 ?1715）氏名在任期間着任時推定年齢戸田出雲守に対する長崎市民の怒り着任時加増戸田は1784（天明4）年に長崎奉行となり、長崎貿易改革を推進した人物である。しかし、当時の長崎は、長引く天明の大飢饉の影響や、オランダ船が来航しなかったこともあり、かなり困窮し、幕府への上納金も払えない状態にあった。にもかかわらず、戸田は長崎市民の貿易の利権を奪ったりして、ひたすら幕府への上納金を捻出することに意を注いだ。そのうえ、抜荷には厳しく対処しただけでなく、気に入らないとすぐ捕まえて拷問し、市民を恐怖のどん底に陥れたのである。そして市民には禁酒を命じたりもした。本人は酒浸りの生活を送っていたのにである。ところが戸田は、1785（天明5）年の秋に長崎で急死する。その死去後、生前の恨みつらみからか、埋葬された墓に小便をする者が絶えなかった。長崎奉行辞任直後の状況水野河内守守信寛永3?5年50─大坂町奉行竹中采女正重義寛永6?9年不明─御役御免切腹曾我又左衛門古祐寛永10年481000石大坂町奉行今村伝四郎正長寛永10年46─不明承応2年死去榊原飛騨守職直寛永11?16年49─御役御免閉門神尾内記元勝寛永11年46─江戸町奉行仙石大和守久隆寛永12年42─小姓組番頭馬場三郎左衛門利重寛永13?慶安4年不明─引退大河内善兵衛正勝寛永15?17年62800石辞職（病免？）柘植平右衛門正時寛永17?19年59─江戸で死去山崎権八郎正信寛永19?慶安3年58─長崎で死去黒川善兵衛正直慶安3?寛文4年49─病免甲斐庄喜右衛門正述承応元?万治3年不明─江戸で死去妻木彦右衛門重直万治3?寛文元年57─勘定奉行島田久太郎守政寛文2?5年39─病免稲生七郎右衛門正倫寛文5?6年40─長崎で死去松平甚三郎隆見寛文6?11年不明500石辞免河野権右衛門通定寛文6?12年47500石病免牛込忠左衛門勝登寛文12?天和元年51500石病免岡野孫九郎貞明寛文12?延宝8年51500石病免川口源左衛門宗恒延宝8?元禄6年51500石江戸町奉行宮城監物和充天和元?貞享3年48500石御役御免大沢左兵衛基哲貞享3?4年65500石長崎で死去山岡十兵衛景助貞享4?元禄7年64500石病免宮城主殿和澄貞享4?元禄9年58─江戸で死去近藤備中守用高元禄7?元禄14年50─大目付丹羽遠江守長守元禄8?15年53500石江戸町奉行諏訪下総守頼蔭元禄9?11年54500石御役御免大島伊勢守義也元禄12?16年40─作事奉行林土佐守忠和元禄12?16年42─江戸町奉行永井讃岐守直允元禄15?宝永6年30─病免別所播磨守常治元禄15?正徳元年36─病免石尾阿波守氏信元禄16?宝永2年35─病免佐久間丹後守信就元禄16?正徳3年58─病免駒木根肥後守政方宝永3?正徳4年35─作事奉行久松備後守定持宝永7?正徳5年53500石勘定奉行大岡備前守清相正徳元?享保2年33─江戸で死去石河土佐守政郷正徳5?享保11年56─辞免『新訂寛政重修諸家譜』より作成そこで、戸田の墓への小便禁止令が出たほどであった。長崎奉行の利得と職務の厳しさよく長崎奉行に着任すると、かなり儲かったという話を聞く。確かにオランダ貿易でも長崎奉行枠で個人貿易が出来たし、八朔礼で外国人や長崎の町年寄や役人たちから金品をもらったり、様々な方法で長崎奉行にはかなりの利得が見込まれた。しかし、17世紀を中心とした長崎奉行就任者の後職を表で見てみると、長崎奉行の後すぐに役職に付く者は少なく、「病免」や「死去」などが目立つし、辞職や免職もある。一年交替で江戸と長崎を交互に勤務するのは、今でさえも大変な労力を使うことだろう。それに加えて、江戸とは習慣も風土もかなり違う長崎において、外国人や自治意識の強い長崎の市民たちをうまく統治していくことは、決して容易なことではなく、心身ともに過重なストレスがかかったであろう。こうして見てみると、長崎奉行も、なかなか苦労の多い役職だったことが窺える。＜参考文献＞1）鈴木康子『長崎奉行の研究』思文閣出版2007年2）鈴木康子『長崎奉行－等身大の官僚群像－』筑摩書房2012年3）鈴木康子「天明前期の長崎情勢と長崎奉行の特質－戸田出雲守氏孟を中心として－」松方冬子編『日蘭関係史をよみとく』上巻臨川書店2015年4）荒木周道『幕府時代の長崎』長崎市役所1903年＜写真提供＞写真1?6鈴木康子写真6大音寺にある戸田出雲守の墓石Civil Engineering Consultant VOL.272 July 2016033