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写真5レイ中心部の市場写真6ビートルナッツを売る露店び出るほどだ。ホテルは日本のビジネスホテルクラスで1泊3万円、朝食は別料金で3,000円といった具合である。生活スタイルこれほど物価が高い中、月の平均世帯収入が2万円ほどの市民は、どうやって生活しているのだろうかと不思議になった。しばらく滞在して分かったことは、やはりパプアニューギニアの生活スタイルの基本は「自給自足」という事である。都市部に住む一部の富裕層を除いて、大半の人々は自給自足であるため、外で買い物をする必要がほとんどない。この事実を確信するに至ったのは、ある日のドライバーとの会話である。プロジェクトで雇用していた29歳のドライバーには4人の奥さんがいて、一夫多妻はキリスト教のパプアニューギニアであっても法的に認められているとの事である。4人の奥さんのうち3人には子供がおり、それぞれの第一子だけをドライバー自身が引き取って共に生活し、第二子以降は奥さんが育てる。4人の奥さんにはそれぞれ結婚と同時に家を建て与え、各家を月に一度くらい訪問する程度で、ドライバー自身は3人の子供と両親と生活している。4人の奥さん同士は非常に仲が良く、奥さん同士で一緒に買い物に行ったりもする。ドライバーの給料でどうやって養っているのかと聞くと、「何もお金は払っていないし、払う必要はない」との事であった。家だけ与えれば後は放っておいても何ら問題ないのである。唯一、病気になった時だけは通院費を負担しているようだ。やはり自給自足は本当なのだと確信した。郊外にはスーパーマーケットのようなものはなく、野外市場と露店しか存在しない。そこで売られているもののほとんどは、ビートルナッツと呼ばれる嗜好品であり、農作物は僅かばかりだ。これも自給自足の証であろう。ビートルナッツはヤシ科の植物の実で、他にコショウの葉と石灰の3点セットで売られており、これらを一緒に噛むと口の中で赤く変色し覚醒作用が生じるらしい。石灰と一緒に噛むというのは何とも身体に悪そうだが、この商売だけはどこに行っても繁盛している。土地パプアニューギニアの土地の97%は「カスタマリーランド」と呼ばれる慣習的土地所有制度の下、部族毎に共同所有しており、土地の売買はほとんど行われていない。首都ポートモレスビーでは、古い一軒家でも1億円を超える価格で売買されている。この国では、土地は何よりも大切なものと考えられており、現代でも隣の部族と土地を巡る争いが起こっている。海岸沿いにブルーシートのテントが並ぶ集落を見かけたが、これは争いに負けて元の土地を追い出された人々との事だ。一世帯当たりの土地が広いのも面白い。どう見ても土地に余裕があるような家屋が疎らな集落でも、「もうこの土地はいっぱいだ」と人々は言う。やはり自給自足をするためには、ある程度広い敷地が必要なのだろう。パプアニューギニアの人口分布も独特だ。気候が良く天然資源の豊富な高地ハイランド地方に、人口700万人のうちの約40%となる280万人が集中している。都市部ではポートモレスビー首都圏に約30万人、レイ都市圏に約20万人と少ない。レイ周050Civil Engineering Consultant VOL.272 July 2016