ブックタイトルConsultant272

ページ
61/66

このページは Consultant272 の電子ブックに掲載されている61ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

Consultant272

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

Consultant272

Q3A3Q4現地の資材を活かし、ひと案件つとして同じものを作ることフィージビリティ調査(155km)アフターケア調査(160km)のない、正に現場合わせの基本・詳細設計、建設・機材供与橋梁9橋、コーズウェイ17基、取付道路作業の連続でした。第4工区(ネパールトック-ドゥリケル)50km基本・詳細設計、建設新設道路50km、橋梁5橋、コーズウェイ8基工事には20年間を要しまし第4工区緊急復旧工事第2工区(シンズリバザール-クルコット)36km基本・詳細設計、建設新設道路36km、橋梁1橋、コーズウェイ2基たが、1996年の着工直後に第2工区斜面対策(ドゥングレバンジャン)第3工区(クルコット―ネパールトック)37km発生した、共産党毛沢東派基本・詳細設計、建設(マオイスト)による武装闘争が2006年の包括和平の成立で治まるまでの間は、政治の変動が激しく、また、洪水や地すべりによる大規模な被災もありました。最後の3年間は、比較的落ち着いていたとも言えますが、それでも、乗り込み直後から、進まない用地取得と住民移転、住民による工事妨害(バンダと呼ばれる強制ゼネスト)、更には選挙に絡む爆破事件もありました。また、自然災害では、豪雨による迂回路の通行止め、道路上流域の大規模地すべりによって出来た天然ダムの決壊時の緊急対策など、常に問題を抱えていたような気がします。道路沿線の住民は作業員であり、また一部はバンダの実行者ですが、建設が進み、生活が改善し住民の顔つきも柔和になると、道路の完成による効果を実感できるようになりました。本プロジェクト実施において安全面に留意した点を教えてください。2009年には地元政府による道路が開通し、ジープや小型バスがかろうじて通れる仮設道路が計画路線と一部交差しながら開通しました。これにより同時に一般車両が混在する交通状況となり、交通安全対策、急勾配かつ狭隘な仮設道路の維持管理、整備不良車の故障やトラブルへの対応等に常に悩まされる工事になりました。また、ケモノ道も造れないような急斜面に作業員が命綱1本で足元の岩場を崩すような掘削作業もありました。ネパール側も巻き込み、施主にも安全・治安対策の一部を負担してもらうことで、安全に対する一体感が生まれたと考えます。また、作業員への「ナマステ」に始まる声掛けは安全に対する意識の向上にも繋がりました。竣工後、計画していた全線開通式典の直前に大地震があり、ネパールの市街地は大きく被災しました。その時の状況や対応についていかがだったのでしょうか。表1プロジェクト実施工程第1工区(バルディバス-シンズリバザール)37km新設道路37km、ボックス型コーズウェイ12基198019902000201096 7081 2 3 4 5 6 7 8034591 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 26A4Q5A5?まとめ写真1 第三工区2期完工検査時(左が藤澤氏)地震が起きた時はカトマンズにいましたが、多くの幹線道路が不通となる中、シンズリ道路はその日から避難路として、その後は支援物資の輸送路として機能し、日本の工事の信頼性と耐震性に高い評価を得ました。しかしながら、シンズリ道路を横切る断層の存在や余震の震源が道路の北側に移動したこと等もあり、道路にも損傷が発生しました。日本政府の承認と資金を得て、雨期前に応急対策を実施したことにより、ネパール側から日本の迅速な震災復旧に感謝を頂きました。突発的な事件や災害に素早く対応することも建設コンサルタントの大きな役割であると痛感しています。今後海外業務に取り組もうとする後進へのアドバイスがあれば、お願いします。海外の醍醐味は、言い方は悪いのですが、人為的・自然的に何が起こってもおかしくない、予測できないことが起こりうる、未知の現場での業務実施にあります。多くの国で、インフラ整備における日本の技術が求められていますが、技術だけではなく、ひとつひとつ現地の人々と一緒になって積み上げていく誠実な対応が日本に期待されていることだと思います。また、今後ますます増えると思われる災害に対する臨機応変な対応も期待されていることの一つだと思います。まさにビックプロジェクトと言えるお話をお聞きしました。相当なご苦労があったと思いますが、プロジェクトの完成という醍醐味がまさにそれを上回るのだ、ということをひしひしと感じました。また、最後の「誠実さと臨機応変な対応」という言葉がとても印象的でした。皆さんの技術者としての経験を、ぜひ海外事業で活かしてみませんか。Civil Engineering Consultant VOL.272 July 2016059