ブックタイトルConsultant275
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Consultant275
写真2お寺のまちライブラリー写真3歯科医院のまちライブラリーわることになった。そこは日本の教育が専門分野に特化し、縦割りになっていたのを広く分野をまたぎ、次代に貢献できる人材の育成が必要であると始めた小さな私塾であった。その後、この活動が慶応義塾大学や早稲田大学などの都心での活動拠点づくりと連動した形で「アーク・アカデミーヒルズ」へと展開し、さらに2003年に六本木ヒルズで「六本木アカデミーヒルズ」へと発展した。誕生直後の小さな私塾は、六本木では巨大な施設の中で国際的なフォーラムや会員制の図書館活動へと拡大していった。このような発展の一方、施設や組織が巨大化する中で「顔の見える関係」が失われていったように私には感じられた。そんな折に全国の限界集落を歩き廻り、目の前にいる地域の人を大切にする若者と思いもかけない出会いをした。彼との出会いで学んだのは結果を追うのではなく、「自らやれることをやり、そこで出会う人を大切にして先に進む」というミクロな視点で活動をする大切さであった。そこで私自身が取り組む、小さな個人的な活動としてスタートしたのが「まちライブラリー」である。現代社会の中で、ともすれば資本力や組織力がなければ何もできないと考えがちな中で、まちライブラリーはお金や場所、組織がなくても、本を通じて人と出会うというコンセプトを共有できれば、誰でもやりたい方法でやれることを実証したくて始めたのである。個の力でスタートできるまちライブラリー最初のまちライブラリーは、私が生まれた場所に建つ大阪市中央区の小さなビルの一室(20坪)に誕生した。本箱を手作りで作成し、毎月1回実施される「本とバル」というイベント参加者からの寄贈で本は増加していった。参加者は寄贈する本を一冊持ち寄り、自己紹介のかわりに本を紹介しあい、様々なテーマの話やワークショップをやり食事を楽しむ。それによりお互いの価値観や個人的な悩みなど、素直に話せる雰囲気が生まれている。5年の歳月を経て、今では5,000冊近い本が寄贈されただけでなく、参加者の間で家族的な雰囲気が生まれている。まちライブラリーは他にも、古い家を改造したカフェ、小さなお寺の境内や本堂、大学病院の透析センターなど、この5年間でいろいろな場所に広がった。天井まである本棚に囲まれた歯科医院では、落語や読み聞かせのイベントをやっている。神戸の商店街では22のお店が協力して、それぞれ「音楽」「デザイン」「村上春樹」などテーマの違う本を集めている。姫路の小学校では、生徒が廊下にまちライブラリーをつくり、いろいろな学年の子が本を借りられるようにしている。中には本棚もなく、公園にピクニックシートとお弁当と本を持ちより、そこで本の紹介をしあい、交換するだけのまちライブラリーもある。亡くなられた奥様の本をもとに、自宅をまちライブラリーにして活動されている方もいる。最近では家やオフィスの外に巣箱のような本箱を置いて、その中に本を置き、自由に貸し借りをするまちライブラリーも誕生している。蔵書ゼロ冊からの図書館2013年春、大阪府立大学のサテライトキャンパスの中に「蔵書ゼロ冊からの図書館」を作ろうというユニークなまちライブラリーが誕生した。廊下や教室の壁を本棚にし、市民が本を持ち寄ることにより育てるライブラしょくほんさいリーとしたのだ。開館前に「植本祭」というテーマの異なる48にのぼるワークショップを実施し、それぞれの集Civil Engineering Consultant VOL.275 April 2017019