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写真1建設中の取水堰写真2水圧鉄管路とニャカチ地区写真3ソンドゥ・ミリウ発電所した。弊社は1985年から28年間に渡り、計画、調査、設計、施工監理まで一貫したコンサルタント業務に従事した。当事業はソンドゥ川の流水を取水し、長さ6.2kmと1.2kmのトンネルと鉄管路で発電所に導水し、長さ4.7kmの放水路でソンドゥ川に戻す最大出力60MWの発電所を建設する事業である。また、追加事業で最大出力21MWのサンゴロ水力発電所を建設した。(写真1~3)本事業は幾多の困難を乗り越え完成し、ケニアに大きく貢献していることが高く評価され、海外において日本企業が携わった優れたプロジェクトを表彰する国交省の「JAPANプロジェクト国際賞」を2009年に受賞した。図書館開設の経緯私は、1997年から2004年にかけ、当事業の現場所長として現場に駐在し施工監理を行った。現地では仕事が少なく貧しい生活を送る人々の「発電所の建設が始まれば就職の機会も増え、生活が良くなる」という強い期待があった。だが、工事で労働者として雇えるのは希望者をはるかに下回る2,000人が限度であり、これに一部の住民が不満を訴え、さらに工事での環境問題も取りざたされ、事業が滞ることがあった。そのため、住民代表やNGO、行政官、有識者、議員からなる技術委員会が設置され、私も直接の担当者として参加した。同会が問題の調査と分析、解決策の提案を行い、関係者が一体となり雇用や環境の問題解決に取り組み、徐々に住民の理解と協力が得られ、事業が円滑に進められるようになった。私は大規模なインフラの建設事業だからこそ、地域住民との対話や信頼関係が欠かせない、事業の恩恵が住民にきちんと届き、発電所が住民と共存できる関係を作らなくてはいけないと強く感じていた。そんな折の2000年末、現地のヘラ婦人会から「地元コミュニティのために何か支援して欲しい」と相談があった。発電所が建設されるニャカチ地区はケニアで最も貧しい地域の一つであり、ルオー族が農業と漁業で生活している。しかし教育には熱心で、親は無理をしてでも子供を学校へ通わせていた。当時現地の小学校では政府の教科書の無料配布が数人に一冊しかなく、授業で使用した後、先生が教室の棚に鍵付きで保管していた。生徒は学校で先生が黒板に書いたことを書き写したノートで勉強するしかなく、日本の小学校では考えられない教育環境に驚き、また同情していた。私は小学校の時、図書館で本を読み未知の世界を知ったことや将来の夢を描いたことを思い出し、現地の子供達にもそのような機会を与えたいと思い、教科書や本を自由に読める図書館の開設をヘラ婦人会へ提案した。ソンドゥ・ミリウ公共図書館の開設2001年6月、ケニア発電会社の工事用の建物の一室を間借りして、弊社の社員や現地の技術者から開設資金と英語の本を、施工業者の鴻池組から机や椅子を提供してもらい「ソンドゥ・ミリウ公共図書館」が発足した。3)当時11歳の生徒は「図書館には興味深い本がたくさんあり、管理の婦人が『終了ですよ』と言うまで、時間を忘れて本を読んでいました」と、14歳の生徒は「私は図書館から6kmくらい離れた所に住んでいますが、一冊の教科書も持っていないのでたいへん役に立ちます」との感想を書いている。工事が終了し、ケニア発電会社の建物が利用できなくなったため、2004年10月に「図書館を応援する会」と大阪府高槻市の「弥生が丘いきいきクラブ」からの支援Civil Engineering Consultant VOL.275 April 2017023