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Consultant275
に伴う公共施設利用の促進、さらにはものごとを「シェア(共有)」する価値観の浸透もあるだろう。そういった社会全体の背景があり、また大型ショッピングモール型のビジネス開発が行き詰まりを見せるなかで、そもそも図書館が持っていた集客力の潜在的な可能性があらためて評価されているのだ。では、図書館の集客面におけるポテンシャルとは何だろうか。それは「1利用が無料であること」「2借りた本を返すために繰り返し利用する仕組みであること」の2点にある。少なくとも公立の公共図書館は図書館法において、「入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない」と定められている(無料原則)。このため、たとえば家族連れでの利用にあたっても、図書館自体で直接的に消費活動は発生しない。当然、現在の経済環境下では使いやすく通いやすい施設と映る。また、貸出と返却というサイクルがある以上、一般的には貸出期間が2週間以内に設定されているため、単純計算すればひと月に2回の来訪(リピート)が見込まれるのである。「無料」と「リピート」というこの2つの特性をみれば、図書館という施設が実は大きな集客能力を秘めていることは歴然としているだろう。写真2くまもと森都心プラザ図書館にぎわいの核としての図書館当然、この図書館のポテンシャルは「にぎわい」や「まちづくり」、「中心市街地活性化」という文脈に位置づけて理解され、実際の計画に反映されている。複数の機能を一つの施設にあわせもつ複合施設を計画するに際しては、集客能力に富む図書館をその核に配置し、図書館が引き寄せた来場者を周囲の施設やエリア全体に流し込むという発想が各地で展開されている。かくして、インターネット時代にはもはや不要な機能・施設ととらえかねない現代において、図書館はその評価を大きく変えている。にぎわいの核として図書館は再評価されているのだ。実際、すでに各地で図書館を核とした地域開発が執り行われている。その代表的なものの一つが、補助金に頼らない新しい公民連携を模索するしわ挑戦的な取り組みである岩手県紫波町のオガールプロジェクト(写真3)だろう。この取り組みでは複数予定されている施設計画において、中核的な役割を図書館が担っている。詳しくは猪谷千香著『町の未来をこの手でつくる-紫波町オガールプロジェクト』(幻冬舎、2016年)を読み込むのがよいが、図書館を明確に計画の中心に位置づけ、かつ成功へと近づきつつある取り組みだ。図書館の拡張、あるいは図書館の再興いま、紫波町のオガールプロジェクトを挙げたが、もちろんそれ以外にも図書館を核とした試みは各地で相次いでいる。しかし、そこには厳しい現実も少なからず広がっている。確かに図書館はにぎわっているが、その周辺地域にはそのにぎわいが波及していないというケースも確かにある。思い描いたほどの成果があがらない理由はさまざまだろう。その一つには核として据える図書館の役割について、十分な検討がなされているか、その差が結果の差につながっているケースもある。では、図書館の役割とは何だろうか。昨今のトレンドをまず見てみよう。冒頭でふれたカフェを併設する図書館は武雄以前から実は相当数存在している(『ライブラリー・リソース・ガイド』第12号「図書館×カフェ」特集参照)。また時代の要請にあわせて、託児機能の提供を行う図書館も現れてきている。さらに先に挙げた武蔵野プレイスや2010年にオープンした塩尻市市民交流センター(えんぱーく)のように、図書館機能と市民交流機能が複合的に重ねあった施設も登場している。つまCivil Engineering Consultant VOL.275 April 2017027