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Consultant275
巻頭言Consultants「3.11」復興の現状遠藤敏雄一般社団法人建設コンサルタンツ協会常任理事東北支部長東日本大震災から6年を迎えました。復興・創生期間に移行して1年が経ち、被災地では至るところで工事が行われていますが復興半ばです。建設コンサルタンツ協会東北支部では、災害発生直後から復旧・復興に当たっており、現在、発注者支援業務やまちづくり等のCM業務に精力的に参画しているところです。支援業務の要請は増加の一途で、技術者不足に悩んでいます。引き続き会員各位のご支援をお願いします。避難者の現状被災3県の避難住民は平成29年2月13日現在で、未だに12万3千人にも及んでいます。また「3.11」の犠牲者は18,449人(行方不明者2,556人含)を出しましたが、帰還に大きな課題を残す福島県では、直接死1,613人よりも関連死のほうが多くなり、今や2,086人となりました。帰還困難区域外については除染が進み、避難指示が全ての区域で解除されました。少しでも早く安定した暮らしが出来ることを切に願っています。一方で震災後に発生した激甚災害は全国で21件あり、東北も毎年被害を受けました。平成28年の台風10号では、岩手県は観測史上初の豪雨となり22人もの犠牲者を出しました。津波災害に遭遇した住民が、今度は台風による河川氾濫で二重の災害に見舞われました。まだ津波の災害から立ち直っていない状況で、脆弱な国土であることを再認識させられました。公共施設復興の現状津波被災地では、高台の新しい住宅地への移転が始まっています。高台の造成工事は70%、災害公営住宅も83%が完成し、平成30年度内に住宅の事業はほぼ完了予定です。水産加工施設は88%が再開、農地は83%で営農可能になりました。大規模農業への転換や、最新技術を駆使した施設を使った栽培など、新しい農業も始まっています。復興道路・復興支援道路として、異例のスピードで事業が進められている三陸沿岸道路や横断道路等は、総延長550kmのうち開通区間が254kmで46%、開通予定を公表した区間を併せると503kmで91%になりました。常磐自動車道は平成28年3月から4車線化に着工。建設中の日本海沿岸道路も完成すると、東北は3本(一部4本)の南北方向に並行する高速道路ができます。更にこれらを連結する横断道路を巡らせ、港湾や空港とのアクセスを良くすることで、広大な土地は一気に狭まります。食料基地東北から、国内外に高品質で安全な農林水産物の供給が可能になる等、東北経済に大きく貢献すると思われます。鉄道はJR東日本管内で約400kmが被災しました。壊滅的な被害にも係わらず、死亡者を出さなかったのは、リスク管理の高さと独自の情報網を駆使した結果で賞賛すべき事です。日本の鉄道の安全管理を証明できたと思います。また、これまでに常磐線と山田線の一部区間の外、全て運行を再開しました。津波被災でまちづくりと共に新設ルートで建設された仙石線(高城町~陸前小野)が平成27年5月に、常磐線(相馬~浜吉田)が平成28年12月に運行を開始。大船渡線・気仙沼線の一部区間は、BRT区間として平成24~25年に運行を開始しています。BRTは便数が多いことや各停留所でのバスの運行状況が把握できて快適です。被災地にはコンパクトシティーとネットワーク化が完成しつつあります。地方のまちづくりの先行事例となるでしょう。後世へと伝承東日本大震災を風化させないようにと、各地で震災遺構の保存や震災遺構展が開催されています。平成29年2月には国土交通省東北地方整備局が中心になって「風化させない・忘れない」シンポジウムが東京で開催され、盛況のうちに終わりました。引き続き、災害に関する知恵や経験、教訓を様々な形で記録に残し、正しく国内外に向け後世へと伝承していくことが必要であると考えています。平成32年9月には仙台市で世界地震工学会議の開催が決定しました。平成32年度は震災後10年、復興・再生のシナリオの最後の年となります。復興した姿を世界の人々に見て頂き、感謝の意を表することになります。建設コンサルタンツ協会東北支部も何らかの形で参画したいと考えています。