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ので、腐りにくかったのです。交通の便が悪い時代、県北では海の魚は塩漬けでしか食べられませんでした。サメ肉は刺身で食べることができる唯一の海産物。サメ肉をわにと呼び秋祭りや正月、祝い事の席のご馳走でした。東北や九州の一部でも食する文化があるようですが、他県では沿岸部で漁師のまかないだったのに対して、広島県では山間地域で食され、ハレの日のご馳走であったことが特徴的です。流通も発達し、山間部でも新鮮な魚介類が手に入る今では、普段にわにを買い求める人は少なくなりました。しかし、郷土の味とみなす意識は高く、わにを使ったメニューを提供する店は珍しくありません。わに料理専門店もあります。昔は鮮度が落ちるとアンモニア臭がきつくなるので好まれないこともありましたが、今はどれも美味しく食べることができます。写真7「もぐり船」と呼ばれる海苔漁専用の船力を合わせる小名物こうしてみると、広島県の「小名物」には「鮮度勝負の素材」と「暮らしの知恵」という特徴があります。前者は小いわしや生海苔を一例として、地元の人でも一番おいしい瞬間はなかなか味わえないという稀少性があります。また、広島人が美味と評価す写真8自家製漬物を持ち寄ってお茶請けにした「漬物オードブル」る白身魚の刺身には、コリコリした食感があります。「神が少ないため、耕作地が少なく、水の確保にも苦労をし経締め」という魚の締め方は、この食感を維持するためました。自給自足の生活を余儀なくされた暮らしの中に欠かせません。広島の港につく漁船が比較的小さいで、味噌などの自家製調味料や干し物を作る技術を発ので、1尾ずつ丁寧に神経締めをするという手間を掛け達させました。ることができるのです。山もある、海もあると、非常に食材に恵まれた県です後者は、わに食文化のように地理的や物理的環境下が、大きくまとまった産地としてブランド化するのが困難さんしで、知恵と工夫によって食されてきた郷土の味です。県です。毛利家の「三矢の教え」のごとく、小さな名物同内一の豪雪地帯で知られる庄原市高野町では、漬物オ士、力を合わせていかなくてはなりません。同時に小規ードブルが名物です。長い冬の間、お茶会の時には各模ゆえに、他県にはない珍しい品種や製法を維持でき家庭で作った漬物を持ち寄ったのだそうです。安芸太るという強みがあります。田町には、伝統野菜「太田かぶ菜」の古漬けが名物でまだまだ広島の小名物の話は尽きません。地元でもすが、古漬けを炒めものにして食べる文化もあります。限られた人しか知らないものが豊富にある広島県。一度知恵が生きた食文化は山間部に限ったことではありまや二度訪れる程度では、その探求心は決して満たされせん。島しょ部は、気候は温暖ですが、小さな島は平地ることはないでしょう。Civil Engineering Consultant VOL.276 July 2017021