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レンタサイクルの利用は1,361台であったが、2015年の外国人客数21万人に対しては5,695台となった(図5)。尾道の外国人観光客の8.3%がレン(千人)250200タサイクルを利用したことになるが、特に欧米からの客の利用率が高い。150旅行者のバイブルといわれるLonelyPlanet社のガイドブック『Japan』2015100年版では、しまなみ海道のサイクリングについて1ページを割いて詳細な50説明が掲載されており、今後も利用者の増加が見込まれる。0しまなみ海道のサイクリング客の増加は観光政策が奏功している。尾道は坂の多い古い町並みや、映画のまちとして古く知られる観光地であるが、2011年に開始した瀬戸内海の観光振興策の一環として瀬戸内サイクリングロードの整備や利便性の向上、プロモーション活動の促進が図られた。自転車と船の利用を連携させた瀬戸内サイクルーズパスが導入され、国際サイクリング大会も開催された。国内のサイクリングブームの追い風もあってサイクリング客が増加し、それに伴い宿泊施設や休憩スポットなどサイクリングに快適な環境も整備されてきた(写真1)。その結果、海外にも情報が拡がり、世界的にみても魅力あるサイクリングコースとなったのである。2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015外国人観光客数レンタサイクル利用数図5 尾道市外国人観光客数(左軸)とレンタサイクル利用台数(右軸)の推移【尾道市の資料より作成】(台)6,0005,0004,0003,0002,0001,0000課題と政策広島県のインバウンドは、欧米人が多くを占めること、ダークツーリズムが観光対象となっていること、そして魅力あるサイクリングコースを有すること、の3点を特徴として挙げた。さらに広島県が2つの世界遺産を有することも全国的には珍しい。ヒロシマとミヤジマは先に挙げた「人気の日本観光スポット」でもあるため、世界中から絶え間なく人々がやってくる。しかし、全国的に見ればインバウンド客は多いとは言えず、特に宿泊客を伸ばすことが県の観光政策の課題となっている。その一つにこれら2カ所をめぐっての対策がある。それは、ヒロシマからミヤジマへは列車とフェリーで1時間足らずで行くことができるため、多くの外国人観光客にとって、京都からの日帰り、もしくはさらに西へ向かう旅行の立ち寄り地となれる点である。ガイドブック『Japan』では、広島市には2~3泊する価値があるとし、宮島では1泊して昼間とは異なる静かな夜を過ごすことを勧めてい写真1せとうちサイクルーズパスのチラシ(右)など、外国人向け観光情報の提供が県内各地、官民で進められているる。したがって、多様な観光行動を促すことや、県内各地の景勝地や観光施設などに観光客を誘致する方策が必要となる。インバウンドをテーマに述べてきたが、外国人旅行者は急増しているとはいえ、国内旅行市場全体における経済効果は1割程度を占めるに過ぎない。9割を占める国民の国内旅行はというと、一人当たり年間平均僅か2泊である。政府が掲げる「観光立国」、またそれを受けた広島の「観光立県」の実現には、まず国内の旅行者を増やし、各地の受け入れ態勢を整備進展させることでインバウンド誘致に繋げることが重要である。Civil Engineering Consultant VOL.276 July 2017029