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写真4赤ちゃんを背負って入場行進、第六回国民体育大会開会式写真3 戸外で裸足の第一回国民体育大会中学女子バレーボールの決勝戦に入れたとされている。奈良時代になると、相撲は重要な宮廷行事となり、全国から選ばれた力士が東西に分かれて対戦し、その勝利によって山の幸か海の幸の豊饒を占い、祈願する営みとなっていた。これらの事例には、スポーツ競技が強き者・優れた者を選び出す営みである事もさることながら、それ以上に、その結果によって神の御心を拝察し、その意図を察知しようとする神聖な営みでもあることが示されている。だから「勝利の女神の微笑」という謂れには、「人事を尽くして天命を待つ」と同様に、競技の結果は神々のお導きであり、勝者とは神に選ばれた者であることが意味されているのである。また例えば、村祭における奉納相撲には、子供たちの健やかな育ち、稔りの豊かさの願い、生活の安寧と平和の希求が込められていた。こうしてみると、古今東西を通じてスポーツは、共同体の願いと祈りを天に届ける営みであり、神意を伺い公示する仕業なのである。神社の境内から土俵が消えて久しいが、こうした天と地をつなぎ、神々と人々を結ぶスポーツの力は衰えることなく、時を超えて継承されているのである。英雄と共同体の絆振り返ってみれば、敗戦の痛手と混乱を超えて、この国をまとめ上げた力はスポーツに負うところが大きい。泳ぐたびに世界新記録を打ち立てた水泳競技の古橋広之進、プロボクシング・フライ級で世界チャンピオンとなった白井義男、空手チョップをふるって悪役を懲らしめて日本中を沸かしたプロレスリングの力道山、「鬼に金棒・小野に鉄棒」と呼ばれた体操競技の小野喬等は、誰しもが知る復興日本の英雄達であった。そしてこれらの栄誉ある列に、1946年、敗戦の翌年に日本体育協会を中心として、全国のスポーツ愛好者が自主的に始めた「国民体育大会」が加えられるべきであろう。「国体」と愛称されるこのスポーツ大会は、都道府県の代表選手を一堂に集め、郷土の名誉を競う総合競技会の形で行われた。国体は、敗戦の傷が大きく残るぎりぎりの暮らしの中で、人々と地域をつなぎ、そしてそれを日本という国に結び付けていく共同体復興の仕掛けとなった。「若い力と感激に」と歌われる国体讃歌は、第二回金沢大会からのものであるが、まさに貧しさの中から立ち上がり、夢と希望の志に向けて人々を結びつけ、つなぎ合ったのである。こうした企まざる一連のスポーツの力は、1964年の東京オリンピックにおいて開花する。東洋の魔女と呼ばれた女子バレーボールの栄光、体操日本の躍進、レスリングのメダルラッシュ等である。そしてこのスポーツのつなぐ力は、札幌から長野へと引き継がれ、スキージャンプにおける日の丸飛行隊の快挙をもたらす。もちろんこうした栄光の陰には、発達するスポーツ科学の成果と競技者のたゆまぬ努力があるが、同時に神の恩寵も秘められている。筆者が行った長野冬季五輪金メダリストのインタビュー調査では、勝因の第一として、「才能」「練習・努力」「適切な指導と環境」よりも、「幸運」を上げるものが大半であった。陸上競技界最速の絶対王者ウサ008Civil Engineering Consultant VOL.277 October 2017