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住民間の交流が活性化した59.2%世代を超えた交流が生まれた60.7%地域の連帯感が強まった24.2%元気な高齢者が増えた49.9%子どもたちが明るく活発になった29.4%住民のスポーツ参加機会が増えた62.3%図2総合型地域スポーツクラブの効用に関する肯定的回答率イン・ボルトがするように、レースに臨むアスリートの多くが「十字を切る」のは、神の加護を念じる行為に他ならない。つながりの力の再生と発展その後、テレビの驚異的な普及と相まってスポーツの人気はますます高まり、ビジネスとして成長するとともに、ヒロイズムは希薄となり、スポーツの祈りの力は衰弱した。アスリートはテレビコマーシャルの常連となり、芸能タレントやアイドルに変貌する。こうして、プロ化したアスリートは共同体の命運に献身する殉教者であるよりは賞金稼ぎの億万長者となり、スポーツのつなぐ力の神秘性は著しく衰退したのである。こうした流れの背景にあった高度経済成長がバブル景気の破綻とともに終了し、長いデフレの時代に入る。少子高齢化という難敵を抱え、景気浮揚に苦労する時代ではあったが、スポーツ人気は相変わらずであった。しかし、プロ野球のトップクラスのアスリートが米国のメジャーリーグで活躍し、Jリーガーのエリート達も英国やヨーロッパの一流クラブに移籍した。こうして、アスリートと共同体の絆は弱まり、スポーツの時を超えて人々をつなぐ力は影をひそめた。2011年3月11日、未曽有の大災害「東日本大震災」が発生した。地震の破壊に加えて巨大津波が襲い、さらに福島原発の汚染が追い打ちをかけ、死傷者十数万という甚大な被害をもたらした。ある意味で共同体存亡の危機が起きたのである。被災地の人々をはじめ、日本人の冷静沈着な行動は高い評価を受けたが、天災による大不幸は深い悲しみと影を日本社会に落とした。ここでスポーツのつなぐ力が再生する。「こんな時にスポーツしてて、いいのか?」という存在論的問いに、「スポーツで答えよう」とアスリートが勇気を奮って立ち上がった。「がんばろう日本、生かされる命に感謝し、全身全霊で正々堂々とプレーすることを誓います」と、懸命なプレーで絆を示し、被災地と日本を元気づけるという選抜高校野球の選手宣誓、「見せましょう、野球の底力を」という復興支援プロ野球試合での選手挨拶などである。それを皮切りに、「スポーツで元気を、スポーツでつながりを」が大きなムーブメントとなっていった。そしてあの「なでしこジャパン」のサッカー女子ワールドカップ優勝の奇跡が起こった。ここからスポーツの「つなぐ力」が蘇り、さらにつながりの世界を拓いてゆく。今やスポーツは、伝統の教育はもちろん、健康・体力作りの役割りに加えて、人々をつなぐ力が高く評価され、ソーシャルキャピタル(社会資本)の重要な柱となり、地域創生におけるキーワードの一つに挙げられている。スポーツの交わりとつながりから、暮らしの内側で創られる新しい公共性が期待される。国造りが一段落し、暮らしつくりの時代に入った。単一種目、同世代、勝利志向の学校運動部モデルに代わって、多種目、多世代、多目的な総合型地域スポーツクラブつくりが進められている。2020年大会でも「レガシー」が問われているが、インフラ以上に、豊かな交流を楽しむスポーツライフスタイルの創造と推進が期待されるのである。<図・写真提供>図1、写真1 JOCホームページ図2文部科学省平成23年総合型地域スポーツクラブに関する実態調査写真2 AFP通信、2016年8月22日配信写真3、4日本体育協会75年史Civil Engineering Consultant VOL.277 October 2017009