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写真3試合開始前の円陣写真4シェルターに身を隠しつつ敵を狙うそこで、冬期の地域活性化の手法として、まず中核となるイベントを創ることとした。1987年8月、町内若者グループ(商業・観光・農業・公務員)によるアイディア検討会が結成され、スキーマラソン、仮装ソリ大会、大雪像づくり、犬ゾリ大会など数々の案が出されたが、どれも二番煎じで決定打には至らなかった。議論の空転が続いたある日、意外にもそのアイディアをくれたのは、東南アジアから来た観光客であった。観光客たちは千歳空港に到着するとただちに観光バスに乗り、最初の訪問地である昭和新山に来る。そこで生まれて初めて見る雪に感激し、その感触を確かめる。その次にする行動は雪をかけあい、雪をまるめて投げることである。その様子は喜々としていて、とても楽しそうであった。雪に対する先入観のない人々がする雪投げの行動は、誰に指示されたわけでもなく自然な振舞いである。雪をまるめて投げることは人間の本能なのかもしれない。「雪国に住む者は、日常的に雪を見ているため、雪の神秘さ、雪遊びの楽しさを忘れてしまっていたのだ」と気づいた。普段は厄介者でしかない雪も、180度発想を転換すれば地域固有の資源となる。「親雪」「利雪」を合言葉に、1987年12月、昔遊んだ雪合戦の楽しさを現代風に再生させ、雪合戦をスポーツイベントとして開発することを決定した。スポーツを核としたまちづくりを推進している自治体は、全国的にみても少なくない。しかし、その多くは既存のスポーツを取り入れる事例がほとんどであり、ゼロから新たなスポーツを創りだすケースは極めて稀である。それがこの実行委員会の活動の最大の特徴である。方向は遊びの要素を残しつつ、スポーツとして育てようということになった。しかし、スポーツとするためには勝敗の決定方法から始まり、コートの広さ、プレイヤーの数、使用する雪球の個数、試合時間、審判のジャッジ方法など、決めなければならないことが山積していた。そこで、様々な既存スポーツを研究し、それぞれの要素を取り入れ、競技内容を固めていった。その後、町内外のスポーツ関係者によるルール制定委員会が結成され、ルール原案、解説図の作成、ルールブックの編集などを行い、1988年12月、世界初のスポーツ雪合戦のルールが完成した。固い雪球から頭や顔を防護するためのヘルメットはスポーツ店兼靴屋の技術を生かし、綱引きのヘルメットにオートバイのシールドをつけて手作りのオリジナル用具をつくりあげた。一試合に540個使用する雪球を一度に大量に効率よく作製するための雪球製造器は、町内農家の人脈により近隣の町の農機具メーカーが開発製作した。コート内に配置するシェルターのつくり方は町内の大工さんから伝授された。自分たちにない技術や知恵はスポーツ雪合戦の開発雪合戦を現代風にどのようにアレンジするのか。その写真5雪球製造機(一度に45個の雪球を造る)Civil Engineering Consultant VOL.277 October 2017019