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写真4ピタ・アラティニファミリーからのメッセージノーサイドの精神震災後の釜石シーウェイブスには国内はもとより海外からも多くの支援物資が届いた。チームはその支援物資を近隣市町村の避難所へも配布して回った。みんな今日を生きるのに精一杯。そんなある日、市民からかけられた言葉は意外なものだった。「貴方たちがやるべきは支援物資の運搬やボランティアではない。今やるべきは練習だ!ラグビーだ!」。震災から2カ月が経とうとする頃、チ―ムの存続と活動の再開が決定した。震災後、釜石で初めて行われた試合はトップリーグの強豪ヤマハ発動機ジュビロとの一戦だ。震災復興と釜石シーウェイブスへのエールを目的に、電動アシスト付き自転車30台を手土産に自費で遠征してくれたのである。優しい心遣いとは対照的に、試合は手加減なしの真剣勝負。結果は一方的なものとなった。1カ月前に練習を再開したばかりの釜石と、リーグ優勝を目指して強化し続けるヤマハとの実力差は明らかだった。5-76の大差で敗れ、釜石が奪ったトライはたったの一つ。釜石シーウェイブスの勇姿見たさにグラウンドに詰めかけた市民は、さぞかし落胆しただろうと思われるかもしれないが、観客席の光景は全く逆のものであった。試合前、試合中、試合後、釜石ラグビーの名物応援でもある大漁旗、釜石ではフライ旗と呼ぶものが何本も振られ、常に大きな声援に包まれていた。「がんばれ!」「行け!」「タックル!」。避難所生活では声をひそめ、周囲に気を使いながら暮らす人々が、大声を出し復興の旗頭でもある釜石シーウェイブスを応援する。ラグビーができる喜びとラグビーを観られる喜びが、グラウンドにも応援スタンドにも満ち溢れていた。そして両チームに「ありがとう!」の言葉が送られた。ここはラグビーの街。市民にはノーサイドの精神がしっかり培われているのである。ラグビーが紡ぐ「やっぱり釜石はラグビーだ!」との想いが更に大きな夢への挑戦と続く。2019年に日本で行われるラグビーワールドカップ(RWC)の「開催都市に名乗りをあげよう」と釜石市は動き出した。たしかに日常生活を取り戻せてもいない被災地にとって、RWCどころではないのは勿論の事である。しかし、瓦礫の山の向こうにも街の明るい未来は見えていない。少子高齢化に加え、震災による人口流出。街が好転する材料に乏しい。ならばRWCを誘致して、それを起爆剤としてより良い地域にしていこうとなった。誘致は自治体が行うものなのだが、市民レベルでRWCの情報を発信し、誘致の機運を盛り上げていこうと「ラグビーカフェ」なるものがつくられた。028Civil Engineering Consultant VOL.277 October 2017