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特集1脳いろ科学から見た色藤田一郎FUJITA Ichiro大阪大学大学院/生命機能研究科/教授物体には色があり、誰もがそれを同じように見ていると思いがちだが、実はそうではない。世界に色は付いておらず、私たちの目と脳が作り出す。見ている色は動物により異なり、時に私たち一人ひとりの間で異なる。驚くべきこれらの事実を辿りつつ、色を感じるしくみと謎を紹介する。ものを見るには光と目と脳が必要私たちを取り囲む世界は、色彩、輝き、陰影に満ちている。四季の風景、草木や岩や虫や魚や鳥や獣たち、スーパーに並ぶ食品や食卓の料理、工業製品や建築物、芸術作品や工芸品など、あれもこれも、これもあれも、私たちの視覚世界を豊かなものにする。色が見えることで、私たちの毎日、人生の一瞬一瞬は、どれだけ楽しいものになっていることだろう。私たちが物体を見ているとき、光が物体に注がれ(投射光)、物体がそれを反射する(反射光、図1)。投射光がどのような波長をどの程度含むかは光源によって異なり、その性質は光源スペクトルと呼ばれる。物体は受けた光をすべて反射するのではなく、ある波長範囲の光はよく図1ものを見るには光と目と脳が必要反射するが、別の波長範囲の光はあまり反射せずに吸収してしまう。この性質は分光反射率と呼ばれる。目に届く光にどんな波長が含まれているかは、そもそも投射光にどんな波長が含まれているか、物体がそのうちのどの波長をどれだけ反射するかで決まる。つまり、光源スペクトルと分光反射率の掛け算で決まる。その光を網膜の細胞が受け止め、その情報を脳に送り、脳が処理を加えることで、色が見えるという心のできごとが生じる。解けないはずの問題を解く脳色には、色相、彩度、明度という3つの性質がある。色相は波長に依存した色の種類を指す。彩度は色の鮮やかさを示し、彩度が高い色は鮮やかな色を指し、彩度が低い色は白っぽさが加わった色(例:ピンク)を指す。明度は色の明るさを示す。同じ色相であっても、彩度や明度が違えば、色は異なって感じられる。例えば、色相が黄色と同じであっても、彩度が下がればクリーム色になり、明度が下がれば黄土色や茶色、ついには黒になる。色相、彩度、明度の違いに基づいて、ヒトは少なくとも数万色の色を区別することができる。色が見えることは、私たちが思っている以上に複雑である。例えば「エーデルマンのチェッカーボード」と呼ばれる錯視図形を見てみよう008Civil Engineering Consultant VOL.279 April 2018