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図2エーデルマンのチェッカーボード錯視(図2左)。白黒のタイルが互い違いに配置されたボードに円筒が乗っている。Aとラベルしたところは黒タイル、Bとラベルしたところは白タイルであるように見える。しかし、周りを覆ってみると驚くべきことがわかる(図2右)。この2枚のタイルは全く同一の灰色で描かれている!2枚のタイルが同じ灰色ということは、反射している光量が同じということだ。この量(z)は、先に述べたように、投射光(x)とタイルの反射率(y)の掛け算で決まる。式に書けばz=xyである。zは網膜細胞により検出され、脳がその情報を受けてxとyの2つを推定する。yが小さければ光をあまり反射しない黒タイルであり、大きければ光をよく反射する白タイルだと知覚する。単純なようで、これは難しい仕事である。なぜなら、例えば網膜から「zは4である」という情報が送られてきたとき、脳は4=xyという方程式を解かねばならない。しかし、4=1×4かも知れないし、4=2×2かも知れないし、4=4×1かも知れない。xとyが小数や無理数でもよいならば、その組み合わせは無限にある。脳は一体どうやって答えを一つに決めるのだろうか。その秘密は、タイルからの反射光だけでなく、状景全体の光の分布から個々のタイルへの投射光の量xを脳が推定し、その推定に基づいてタイルの反射特性yを決定していることにある。「円筒の陰の外にあるタイルAは光がたくさん当っている(xが大きい)のでyは小さいはず、つまり反射率の低い黒タイルである。タイルBは円筒の陰になっているので、投射光は弱く(xが小さく)、したがってyは大きい、すなわち白タイルである」という計算を行なっている。これが、同じグレーなのに、タイルAが黒く、タイルBが白く見える理由である。図3ドレス錯視世界に色はついていない2015年、英国の女性カトリン・マクニールさんがブログに載せたドレスの写真がどんな色に見えるかの議論が、インターネット上で沸騰したことがあった(図3左)。このドレスをどんな色と感じるかは人によって異なる。青と黒の縞に見える人、白と金の縞に見える人、その中間であると感じる人など、様々である。どうして人によって違った色に見えるのかは、先に述べた理屈の延長で説明できる。この写真では周りの状景がトリミングされているため、ドレスへの投射光量xを決める手がかりが乏しい。そのため脳は、投射光量を推定できず勝手に決め、それに基づきドレスの反射率yを決定する。xが大きい(ドレスに光がたくさんあたっている)と推定した人はyを小さく見積もり、ドレスは光を反射しない暗い色、すなわち青と黒だと知覚する。一方、xが小さい(ドレスに光があまりあたっていない)と推定した人は、yが大きく見積もられ、ドレスは光を反射する明るい色、すなわち白と金と知覚する。図3右に示す異なる背景に置かれた2枚のドレスの右半分は同一の印刷が施してあるが、色が違って見えることがその証明である。このように、同じ1枚の写真を見ながら、人によって違った色に見えるのだ。この現象はドレス錯視と呼ばれる。チェッカーボード錯視やドレス錯視は、私たちが色と呼ぶものが実は物体の性質ではないことを教えてくれる。個々の物体は、光をどう反射するかという固有の性質(分光反射率)は持つけれども、固有の色を持っているわけではない。色は見る人の目と脳が作りだすのだ。Civil Engineering Consultant VOL.279 April 2018009