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図2レオナルド・ダ・ヴィンチ『モナ・リザ』1505年頃油彩77×53cmルーブル美術館(フランス)図3 中村誠『モナ・リザ10 0微笑・N O.17』1874年印刷(4色普通製版の1部に、ソラリゼーション工程を加えて印刷した)3 4 . 4×2 5 . 5 c m刊行株式会社ウナック・トウキョウ図4 福田繁雄『モナ・リザ10 0微笑・N O. 5 6』1874年印刷(放射状のスクリーンを使用して製版した)3 4 . 4×2 5 . 5 c m刊行株式会社ウナック・トウキョウ美の幾何学調和論の始祖は紀元前6世紀ギリシアの哲学者ピュタゴラスとされる。彼は宇宙には天体の運行で調和音が響き渡ると考え、協和音の構造が単純な数比関係にあることを発見してこれの論拠とした。彼の宇宙論は2000年以上も後のケプラーまで受け継がれ、続くニュートンも音楽との類推によって色彩調和を構想している。形態における調和美の思弁も古代ギリシアに始まる。黄金分割はパルテノン神殿建設を指揮したフェイデアスが初めて用いた。白銀比と呼ばれる1:√2も同じ歴史をもち、日本でも大和比と呼ばれて法隆寺等で用いられた。またポリュクレイトスは人体比例の規範(カノン)を規定して八頭身の人体表現が一般化した。ボッティチェリのヴィーナスもこれに準じている。平面画での美の幾何学には遠近法がある。外界を見る眼と同じ距離感で描写する絵画技法であり、15世紀にイタリアで確立された。ここに“色の遠近法”を加えたのがレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452~1519年イタリア)で「空気遠近法」と彼は名付けた。近景から遠景になるに従い空気の介在によって青みが増すようにする遠近法である。これを『モナリザ』で解いてみよう。ほのかな笑みを湛えた表情と豊かな胸元、喪服かとみられる衣服に絶妙な配置の手、モナリザは世界の至宝の一つであることを誰しも感得する。背景に目を移すと、近景には肌色と同系色の道があり橋があり、ここは人里らしい。しかし山並みに向かって色調が緑みに移行し、続く遠景は青みを帯びて見る人をこの世ならぬ幽玄界に導く。青の背景は人物像を浮き立たせ、同時にイメージでの対比効果が強調される。レオナルドならではの巧みさである。モナリザは古くから模写もパロディも数知れず世に現れた。中でも格別の評価でルーブル美術館から呼ばれて「モナ・リザ100微笑」展が開かれ、パリ美術界を沸かせた快挙がある。デザイナー中村誠・福田繁雄の制作であるが、その一端を紹介しておく。ここには日本の印刷に関わるメカニズムが存分に駆使されている。視覚の均衡説文豪ゲーテ(1749~1832年ドイツ)は色彩研究でも大部の著作を残している。その中に「視覚的均衡説」という色彩調和論がある。残像現象は視覚の均衡をとるため、互いに“呼び求め合う色”であると考えた。3組の補色からなる6色の色彩環を創案し、補色配色を推奨している(補色とは混ぜると無彩色になる関係の色相)。美術史では反対色配色を意図的に使った作例が数多く見い出せる。補色配色の典型例としてフェルメール(1632~1675年オランダ)の『真珠の耳飾りの少女』を挙げよう。彼の絵の多くは柔らかな光と幸福感に包まれた情景で魅Civil Engineering Consultant VOL.279 April 2018017