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図5ニュートンの色彩環(1 7 0 5)。スペクトル色(虹の7色)を混合すると白になることの概念図である。同時に彼は、色の調和が音の調和と同じく振動比によるだろうとの仮説を立て、色彩環に7音階の記号を付した図6ゲーテの色彩環(1810)。赤(深紅)、黄、青の3原色とその残像色が向かい合った6色構成の色彩環。対向する色は互いに視覚的に“呼び求め合う色”である考え、調和する関係として配色に推奨した了されるが、この絵は、振り向きざまの少女が語りかけてくるだけの場面である。配色も肌色がターバンの青を黄色の結びと垂れで挟み、赤は唇だけ、暗い背景の中で襟元の白が絵全体を引き締め、色合いと明暗の対比で組み立ては単純である。しかし明快さこそがこの絵の魅力である。彼はハイライト部分を光の点で表わす独自の技法を編み出し、光の魔術師と称されている。この絵でも耳飾りの大きい真珠に活かされ、眼にも唇にもさりげない白い点で生気と魅力を生み出している。光の効果を生かす青の使い方が巧みで、彼の青は“フェルメール・ブルー”と呼ばれる。合の原理に啓発されて、点描画法を生み出した。スーラの代表作『グランド・ジャット島の日曜日の午後』を見てみよう。彼は画面を緻密に計算しながら組み立て、数十点の下描きも用意する努力家であった。だが完成画面には詩情が漂い、理論や努力の跡を感じさせない。休日の行楽地ながらこの絵は物音が聞こえず時せいひつも止まったような静謐さに満ちている。色使いを見よう。横が3mに及ぶ大作であるが、全面が小さな色点で埋め尽くされている。点描画法は、対象物の固有色が明暗と色相で把握され、混色する前の原色を並置して表現される。白は多用するが黒は原則として用いない。混色しないため色に濁りみが無く、日陰にも光が行き渡っているかのような効果が生まれている。彼が光学書からの知識を用いた例が芝生の表現で見られる。人の眼は、明るさによって色味が偏向して見える特性(ベゾルト・ブリュッケ現象)がある。この絵では同じ芝生の緑が、陽の当たる部分は黄みに、影の部分は青みに、と明確に描き分けられている。この絵は最終回の印象派展に出品されて激しい論議を巻き起こしたが、惜しいことに彼は風邪をこじらせたことから31歳の若さで死に襲われた。美学と交差する科学19世紀の西欧社会は変動が激しく、美術界も同じであった。自由で劇的表現を求める傾向が強まり、色彩が果たす役割も強く自覚されていった。一方で光学・色彩科学の研究進展も急であった。ここに美学と科学を結ぶ著作が現れる。ゴブラン織工房の化学者シュヴルール(1786~1889年フランス)の『色の同時対比の法則』(1839年)と『色の定義と命名の方法』図版(1861年)である。色彩に宿る論理が若い画家たちの感性の奥を突き動かし、後期印象派の画家から「色のバイブル」と呼ばれた。中でもスーラ(1859~1891年フランス)とその弟子シニャックが熱心で、スーラは「色彩は視覚現象である。網膜の上で色を混ぜることができる」というシュヴルールの視覚混図7フェルメール『真珠の耳飾りの少女』1 6 6 5年頃油彩47×40cmマウリッツハイス美術館(オランダ)018Civil Engineering Consultant VOL.279 April 2018