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色彩繚乱の20世紀20世紀の幕開けで西欧美術界に衝撃が走ったのは、1905年秋のサロン、後に「フォーヴィズム(野獣派)」と呼ばれる展覧会である。これは色彩解放のファンファーレであり、色は物に付随する属性ではなく、人の心を表わすという意味を込めて原色が氾濫していた。マティス(1869~1954年フランス)はこの中核メンバーであり、色彩効果を生涯求め続けて20世紀最大のカラリストと称された。『赤い部屋(赤いハーモニー)』は中期の代表作である。色使いをじっくり見てみよう。人はまず赤の洪水に目を奪われる。画面は奥行感が乏しい平図8面パネル状の色面構成である。視線を巡らせると、赤の色面は緑の外景や室内の明色と黒で引き立てられ、唐草模様で躍動感が生まれている。対比効果がある黄色の配置も絶妙である。配色の巧みさは窓枠に現れている。室内の赤からオレンジ・黄色、室外の緑・青へと色相がリレーされている。そして遠くに赤い小屋が現れ、ピリオドの役割をして画面が終息する。マティスは熟慮の人であった。この絵の描き始めは緑の部屋であったが青で仕上げられた。ひとたびコレクターに渡ったが、最後は赤に塗り替えられたのである。マティスのどの絵にも色の謎がパズルのように隠されている。スーラ『グランド・ジャット島の日曜日の午後』1 8 8 4 -1886年油彩207.6×308cmシカゴ美術館(アメリカ)色彩調和とは色彩学で多才な業績を残したアメリカのジャッドは、世にある色彩調和論を読み通し、色彩調和の一般原理を4つに集約してみせた。第一は秩序の原理で、ある規則性を持った色の配列を挙げている。第二は親近性の原理で、人は自然界で親しんでいる色合いを好むとする。第三は共通要素の原理で、色と色の間に何らかの共通する性質がある場合である。第四は明瞭性の原理で、色の組み合わせに適度の差があり、あいまいでないことを挙げている。「なるほど、これが快い配色のコツかも知れない」と受け止めながらも、何やらもどかしさが拭い切れない。もともと色は形態や材質と共にある。しかも美しさの感図9マティス『赤い部屋(赤いハーモニー)』1908年油彩180×220cmエルミタージュ美術館(ロシア)得には個人差があり、文化の風土性や時代性も投影される。色彩美を解き明かすことは一筋縄でいきそうにない。筆者は、調和論とは感動に伴う思考の遊戯であると考えている。そのため人それぞれの調和論がありうる。美は、愛と同じく先ず心に響くもの、理詰めの原理は後追いの理解であろう。美しさに触れる心があり体験があり、そのとき考える力と感性が増幅し合って創造性が磨かれていくに違いない。そう考えるのだが、皆様は如何であろうか。Civil Engineering Consultant VOL.279 April 2018019